注目のビジネスモデル・トップ10

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2010年に注目されたビジネスモデル・トップ10が話題になっている。10位にPatientsLikeMeが入っている。

Health2.0のビジネスモデルについてこのブログでも分析してきたが、現在見えているのはPatiensLikeMeやSermoのように、患者もしくは医師のUGCデータの再販ということになる。他にもあるはずなのだが、新しいビジネスモデルが医療関連ITビジネス創造のキイになることはまちがいないだろう。

広告、ユザー課金、モノあるいは情報商材販売などのレガシーモデルではないモデル。たしかにPLMはそう言う意味では新しいモデルではあるが、こんなビジネスモデル・トップ10に入るとは意外感が大きい。それほど医療関連ビジネスモデルが貧困であると言うことか。当方のdimensionsはいろいろな可能性を検討していきたい。これまでコンサルとパートナーを組み、マンパワーに頼った販売方法みたいなものを中心に描いてきたが、いかにもロウテクだし、もっと多様で柔軟な発想が必要だと昨秋から考えていた。まして「患者体験レポート」みたいなコンテンツを販売するなど、安易に考えていたこともあったもんだと反省。

ビジネスモデルのイノベーションこそ、Health2.0が成立する大前提だ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

春からdimensions

McCoy_Tyner_dimensions

あけましておめでとうございます。

本日から稼動開始。みなさん、どんなお正月でしたか。東京は寒さは増したものの、おおむね穏やかな日々に恵まれた。お雑煮を食べ、音楽を聞き、本を読み、少しお酒を飲む毎日。昨年の疲れもだいぶ癒えたような気がする。

二日は毎年恒例のラグビー観戦に国立競技場へ。大学選手権準決勝は早明再戦となったが、早稲田が久しぶりの”Ultimate Crush”を見せてくれた。鋭いタックルが決まり、フォワード、バックス一体で走りまわり、AgilityとSpeedで明治を圧倒した。気分爽快。

帰りに古レコード屋を何軒か見て回る。池袋のショップでジャズのLPエサ箱から何気なく引き抜いた一枚が、なんとマッコイ・タイナーの「DIMENSIONS」というアルバム(!)。こいつぁー春から縁起が良いわい。当方、マッコイ・タイナーはこれまでコルトレーン時代作品と70年代「SAHARA」以降の何枚かを聞いてきたが、こんなアルバムがあるとは知らなかった。1983年録音。さっそく聞いてみた。60年代-70年代のデュオニソス的でデモーニッシュな緊張感あふれる演奏ではなく、かなりリラックスした明るくアポロン的な演奏は良いのだが、相変わらず手数も音数も多いのはこの人の特徴か。も少しシンプルに音を整理してはどうかと、老婆心ながら思う。だが、正月にこのタイトルの作品に出会ったのも何かの縁だ。TOBYO_dimesionsのテーマソングにしようか。 続きを読む

2011年へ向けて

2011

2010年が終わる。長いような短いような1年だった。例年にない暑い夏から始まった新規ツールdimensions開発は大幅に遅れ、結局、年末に完成した。「暑い夏。音楽を聞いて乗り切ろう」と発注したマーラーのコンプリート・エディションだったが、これも到着したのは12月に入ってから。何か「夏の忘れ物」が届けられたようで不思議な気がした。

今年はまたHealth2.0ムーブメントが国内でも顕在化した年であった。二回にわたるHealth2.0 Tokyo Chapterはいずれも盛況。その勢いを駆って、10月サンフランシスコで開催された年次コンファレンスでは、日本からMedPeerとTOBYOのプレゼンテーションが行われた。だが国内プレイヤーの数が少なすぎるなど、まだその実体は脆弱であり、今後新規参入プレイヤーが多数現れてこない限りかけ声倒れに終わる可能性もある。

また「新規ブーム」に便乗し、煽るような動きもすでに散見される。かつての「ニューメディアブーム」等のように「結局、評論家、学者、コンサルなどがセミナーや本で儲けただけ」という結末を、あるいは迎えることになるのかも知れない。そうならないためには、事業プレイヤー同士の経験交流、意見交換、コラボレーション促進など、あくまでプレイヤー主体の場作りが重要になるのではないか。特にプレイヤー間のコラボレーションを積極的かつ具体的に進めていくことは、日本のHealth2.0シーンの活性化にとって非常に大切なことだと思われる 続きを読む

dimensions開発を振り返って

distiller

今日は朝から事務所の大掃除。データ処理をシンガポールのサーバに仕掛け、人間の仕事は終了。思えば今年は、TOBYOプロジェクトにとって大きな転換点となる年だったと思う。新規サービスdimensionsの開発着手と完成によって、TOBYOプロジェクトは新たな段階に達したからだ。

TOBYOが収集した膨大な闘病体験データを、何らかの形で医療関連業界に提供しようというアイデアは昨年暮れに出来上がっていた。「二つの医療コアデータ」「開発シーズとしてのコアデータ」「TOBYOプロジェクトの現状と将来」など一年前の一連のエントリには、dimensionnsへ至る基本アイデアの断片が綴られている。だが年が開けて着手したdimensions開発は、予想を超える難産だった。

まず最初に「DFC」(Direct From Consumer)という考え方を新サービスのコンセプトにしたのだが、結果として見れば、このフレーズで新サービスを定義することは不十分であることが判明した。DFCは製薬業界でおこなわれているDTCの対概念であるが、対概念ゆえに「単独で理解しがたい」という弱さがあり、業界用語という限界も持っていた。またDFCということの意味を考えてみても、単に方向を示しているに過ぎず、おまけにほとんど消費者調査一般と区別できない。これでは新規サービスの独自性と機能を定義するには大雑把すぎたのである。

だが、このことを深く考察することなく開発は着手された。そしてようやく開発終盤に至って「DFC」の再検討にとりかかり、最終的に「闘病体験の多次元分解」というコンセプトにたどり着き、ネームをdimensionsに変えた。このコンセプト精緻化の遅れが、開発全体の遅れに影響していることは否定出来ない。DFCというコンセプトで当初発案したサービス・イメージは、たとえば薬品ごとの患者体験レポートを集約したライブラリーのようなものであったが、DFCというコンセプトから出発すると、こんなコンテツ・サービスみたいなものに収束してしまうのであった。もとより我々はコンテツを作るつもりはまったくなかったので、ウェブ上でデータを処理する「ツール」へと路線変更をおこなった。 続きを読む

ブログ四周年に寄せて 2

このブログを始めた頃、まだHealth2.0という明確な旗印は立っていなかったが、すでに米国を中心として、前年のWeb2.0の爆発を受け、医療分野でも新しい動きが出現しはじめていた。私は、2006年夏頃からこれら新しい動きの探索を開始したのだが、当時すでにニューヨークからユニティ・ストークらが”Organized Wisdom”を立ち上げ、患者SNS”Daily Strength”や医療バーティカル検索エンジン”Healthline”も公開されていた。

それ以来、幸運にもHealth2.0の誕生から今日に至る発展過程をすべてリアルタイムに観察し、このブログに記録することができた。PHRからPatientsLikeMeまで、このブログはHealth2.0に関連するほとんど全領域をカバーしており、最大の日本語レビューになっていると自負している。これからHealth2.0を知りたいと考えておられる方は、とにかくこのブログを初めから通読していただくのが一番手っ取り早いだろう。

さて、このブログを支えてきたのは、当方のベンチャー・プレイヤーとしてのプライドであると考えている。2006年当時、Web2.0の影響が必ず医療に波及するだろうという見通しを立てたわけだが、まだ誰も日本でそれに言及する者はいなかった。そうであれば自分で事例を探し出し、分析し、洞察し、記録していくしかない。それをやればいち早く新しい知識情報を獲得でき、新規事業アイデアの想を練ることもできる。だが、獲得した情報は秘匿するのではなく、積極的に公開し、誰でも読めるようにしておく。そうすれば日本においても、いずれHealth2.0プレイヤーが現れるだろう。つまりこのブログ自体がTOBYOというベンチャー・プロジェクトの一環であると同時に、できうれば「将来の日本のHealth2.0」へ向けた戦略情報発信装置という役割も果たしたいと考えていた。 続きを読む