今年の春に「患者エンゲージメント」と題するエントリを書いた。この「患者エンゲージメント」という言葉が持っている今日的意味を少し整理しておこうという意図があってのことだった。だが、何か大事なことを書き忘れたのではないかと、釈然としない気持ちが書き終えたあとに残ったことを覚えている。
その後この「エンゲージメント」のことはすっかり忘れていたが、最近、米国の製薬マーケティング関連のブログ筋でメルクの消費者向けサイト「MerckEngage」 が話題になっており、あわせて「エンゲージメント」について論じられていることに気づいた。この「MerckEngage」では今月から会員ユーザーに対しメールで健康情報を提供し始めたのだが、どうもメール送付を希望しないユーザーにまでメールが届けられてしまい、しかも「メール受信拒否」のオプトアウト手順が複雑すぎると批判の声があがったのである。
昨年、従来サイトをリニューアルして新規オープンした時、「MerckEngage」に寄せられた反応は芳しいものではなかった。“Merck engage is not engagement at all”というブログエントリまであらわれたのである。サイトタイトルに「Engage」と明記されているのにサイト自体はまるでちがうと、その羊頭狗肉ぶりが批判されたわけだ。さらにこのブロガーは次のように主張している。
To me engagement is not a website with tools and information for patients. Engagement = conversation.
(私にとってエンゲージメントとは、患者向けツールや情報があるウェブサイトのことではない。「エンゲージメント=会話」なのだ。)
おそらくメルクの担当者はこのエントリを見たのであろう。そして「エンゲージ」という文言を実体化すべく、まさに消費者との「会話」を生み出そうとして、今月からメールをユーザーに送付し始めたのだろう。ところがそのメールが一方的に送られたので、逆に不評を買ってしまったのである。 続きを読む