セミナー: 「リスニングを医療・医薬マーケティングにどう活かすか?」 7月4日(水)午後2時 参加無料

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昨年来、dimensions開発に伴い、このブログで当方なりにあれこれ思考実験を重ねてきた「ソーシャル・リスニング」ですが、今月、「リッスン・ファースト!」の著者ラパポート氏が来日し、日本マーケティング協会主催の出版記念講演会まで開催されました。これで日本でも、今後「リスニング」が広く社会的に理解され、様々に実践されるのではないかと期待しています。昨年、製薬会社などで「リスニング」と言うと、怪訝な顔をされることも多かったのですが、すでに状況は変わりつつあるとの感を強くしています。

さて、このような時期に、まさに時宜を得たセミナーが7月4日開催されます。当方も、dimensionsを中心にお話させていただく機会を頂戴しました。「次世代マーケティング・リサーチ」の萩原さんとご一緒できるのが光栄です。また主催者のワップ株式会社の東海林さんから、これも新しいマーケティング・リサーチ手法として注目されているMROC(エムロック)のご紹介があります。下記の通りご案内いたしますので、奮ってご参加ください。

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 ●テーマ: 「リスニングを医療・医薬マーケティングにどう活かすか?」

●開催日時: 2012年7月4日(水)14:00-16:40

●開催場所: 秋葉原UDXカンファレンス ルームF

●講師、演題

  • 「リスニングからはじまる新しい顧客理解の技術」
  • 萩原雅之(トランスコスモス株式会社)

  • 「患者の闘病体験をリスニングする」                            ~ソーシャルリスニングツールdimensions~
  • 三宅 啓(株式会社イニシアティブ)

  • 「メディカルリサーチにおけるMROCの事例紹介」
  • 東海林渉(ワップ株式会社)

●参加申し込み:

●参加費:無料

●申し込み: 参加受付ページ

●主催: ワップ株式会社

すべての医療情報から、患者の声が聞こえるように: V-search登場!

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TOBYOプロジェクトの「第三の商品」として、近々、病名別検索エンジン「V-search」(上図はロゴ)が登場する。「V-search」の「V」とはバーティカル(Vertical)検索の「V」であり、また、患者の声(Voice)の「V」である。これは、たとえば胃がん患者の闘病体験だけとか、子宮頚がん患者の闘病体験だけとかというように、ある病名に限定したバーティカル検索を実現する検索エンジンである。「V-search」という名前からも連想されるように、dimensionsの「X-search」を元に単独の検索サービスとして新たにリリースする。

すでに「X-search」では、TOBYO収録の約1100病名から一つをユーザーが自由に選び、個別にバーティカル検索することができる。これに対し「V-search」の方は、あらかじめ決められた病名(複数)の検索を提供することになる。また現在、TOBYOではプロジェクト初期のバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」をテスト公開しているが、「V-search」はこれとは違い、「X-search」で開発された新規検索エンジンと新規データセットを使用している。

「V-search」は医療情報提供サービス・サイト、メディア・サイト、疾患啓発サイト、ウェブ制作会社などでの利用を想定している。たとえば、「胃がん情報ページ」などで実際に体験した患者の声を紹介したい時に、この検索エンジン「V-search」を設置すれば、簡単にしかも大量の患者の声を提供することができる。またAPIを介して当方検索サーバと交信するので、出力イメージ、デザインなど設置サイト側の要望に柔軟に対応できる。 続きを読む

データ公開によるパワーシフト

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「『オープンであること』が支配力を再分配する。」
「パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ」P282、ジェフ・ジャービス著、NHK出版)

ソーシャルメディアにおいて消費者は、以前は秘匿していたはずのプライベート情報を大胆に公開し始めている。「どこで、どんな商品を、いくらで買ったか。他の商品と比較してその商品の使い心地はどうか、商品に満足しているか」など、以前はわざわざ「消費者調査」を実施し、質問して回答を集めなければ得られなかったようなデータが、今やウェブ上に大量にあふれる状態になっている。すでにウェブ上に公開された情報をていねいに集めれば、あらためてレガシーな「消費者調査」をする必要はなくなっている。

「価格変動、価格差別化、経済指標、商品や店のトレンド。こうした買い物データを小売店の手から取り上げ、その情報を集合としての買い物客の手に渡す---かつて秘密だったその他の公開データと同じように。すると力が消費者に移る。」(同上)

消費者ひとりひとりがソーシャルメディアを通じて自分の買物行動をオープンにしていくと、やがてそれらをアグリゲートし「買い物データベース」として提供するようなサービスが出てくるだろう。従来、流通チェーンはPOSをはじめとする販売データシステムを構築してきたわけだが、これとは逆に、消費者が自分の購買データをウェブに公開することによって、POSなど「販売」側と対抗するようなオープンな「購買データシステム」が出来上がることが考えられる。この購買データシステムによって消費者は、たとえばこれまであまり知り得なかった「売れ筋商品、死に筋商品」などの傾向実態を知って、自分の買い物に活かすことができるようになるだろう。このようにして、消費者のバイイングパワーは強化されるだろう。

これまで消費者は、企業、行政、メディアなどから、さまざまな手法でその意識と行動を計測されデータ化されてきた。そうして集められたデータはすべてが公開されるわけもなく、消費者は自分に関するデータを集められながら、それらデータすべてにアクセスし利用することはできなかった。消費者は「データ収集の対象」であっても、「データを利用するユーザー」ではなかった。自分たちのデータであっても、それを自由に使うことはできなかった。だが、ウェブは消費者に自分たちのデータをオープンにすることを可能にし、それらのデータ集積は、やがて企業、行政などが保有するデータシステムと対抗的に成長していくだろう。

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がん情報報告制度、オープンガバメント、パワーシフト

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この連休もようやく昨日から5月らしい晴天になった。ところで当方、あいにく体調が悪く、自宅蟄居状態の日々を過ごしていた。どこへ出歩くということもなかったが、雨模様の合間に、妻と新宿へ映画「裏切りのサーカス」を見に行った。この映画は良かった。淡々とシーンを重ね上げる寡黙な作りの映像に好感を持った。ストーリーよりも絵(映像)が良いので、ただじっと見とれていた。あとは自宅で音楽を聞き、本を読み、部屋の片づけをやり、石神井公園を散歩し、あれこれ事業の今後を考えるうちに連休は終わった。

そのあいだも社会は動いている。厚労省は癌患者情報の医療機関による報告義務づけ構想を発表した(日経5月2日「がん情報 全国一元化 病院に登録義務、厚労省検討 」)。

国が集めたがん情報は当面、国立がん研究センターが一元管理する。患者数や生存率の統計はホームページなどを通じて一般市民でも入手できるようになる。将来的にはがんになった際、自分に適した治療法や医療機関を調べる情報源とすることを厚労省は検討している。患者や病院は国や都道府県を通じて情報を提供してもらう。例えば、データベースを通じて症状ごとに治療経験が豊富な病院がいち早く分かれば、患者の早期治療につながる効果が期待できる。

とのことであるが、これまで正確な癌患者数など基礎データ把握さえおこなわれていなかったとは・・・驚かざるを得ない。遅まきながらもデータを収集し公開することに異存はないが、データ公開の方法は「国立がん研究センター」など政府系サイトを通じてではなく、ぜひ海外の「オープンガバメント」のやりかたを研究してもらいたい。すなわち政府系サイトを作るのではなく、データを一般に公開する方法を採用すべきだ。 続きを読む