先月は、PHRの話題を久しぶりに取り上げたが、医療情報システムをめぐる状況は大きく変わりつつある。下のグラフはGoogleTrendで米国における検索ワードの推移を見たものだが、青線の患者ポータル(Patient Portal)の伸長が著しく、PHRを追い越しそうな勢いである。(赤:PHR、オレンジ:EHR)。この患者ポータルの登場によって、従来明確であったPHRやEHRという医療情報システムの区分が、揺らいできているとも言われている。PHRやEHRを区分する線上に位置するようなマージナルなシステム、それが患者ポータルなのである。境界線は溶け始めだしたのだ。
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月別アーカイブ: 2013年5月
ことばの宇宙
前回エントリ「患者による医療評価のイノベーション」に、たくさんのアクセスをいただき驚いている。この分野、つまりウェブ上の患者ドキュメント分析の分野に、予想以上の人々が関心を抱いていることを認識させられた。
ことばの宇宙
これまで私たちは、ウェブ上に自然発生的に生成された闘病ドキュメント・サイト群によるネットワークを「闘病ユニバース」(闘病の宇宙)と呼んできた。このブログでもいろいろな角度から、この自生的なゆるいネットワークを分析してきたのだが、この「闘病の宇宙」が何によって出来上がっているかというと、それは「ことば」によってである。だから「闘病の宇宙」とは「ことばの宇宙」なのである。
現在、闘病ユニバースの広がりはおよそ5万サイトと推定される。そのうち4万サイトをTOBYOでは可視化しているが、この可視化領域に存在することばの総量はおよそ30億ワードである。この30億ワードから、どのように価値のある知識・情報を抽出するかを、私たちはTOBYOプロジェクトの初期段階から考えてきた。その第一段階では、私たちは、この「ことばの宇宙」を名詞とくに固有名詞の集合体と見ていたと思う。病名、病院名、薬剤名、治療法名、医療機器名など、医療分野の名詞・固有名詞に着目し、それらを闘病ユニバースからいかに効率的に抽出するか。これを最初に目指したのである。
患者による医療評価のイノベーション
「大型連休」とは言っても、当方なんだかんだと仕事を続け、結局、完璧に休んだのは二日だけだった。ここ数か月継続して取り組んできたPDRプロジェクトが、いよいよ最終局面に来たからだ。年初に始めたころはまさに暗中模索だったが、ここへきて視界は一気に開けてきている。開発コンセプト「患者の言葉を数量化する」を貫いてきたが、今から思い返してみても、結局この方法しかなかったのだと思う。そして最終的に「患者評価指標」というものにたどり着いた。これは今後のPDRプロジェクトにとって、決定的なアイデアであり、核心的な役割を担うことになると考えている。ネーミングは素直に”Patient Assessment Index”を「PAI」と略した。「パイ」と呼んでいただきたい。
前回エントリでも触れたように、患者は病院、薬剤、治療法、医療者などに対し、主として形容詞や形容動詞で自分の感想を表現している。たとえば薬剤Aに関連する形容詞・形容動詞だけを抽出し、その出現度数、出現確率、対象となる固有名詞との出現類似性等を計算すれば、それぞれの形容詞・形容動詞がどの程度強く薬剤Aと結びついているかを数値化できる。 続きを読む