「サイト認証」という時代錯誤

医療関連ウェブサイトの国際認証団体であるHON(Health On the Net Foundation)が、その認証基本ガイドラインである「HONコード」の修正を計画している。HONはジュネーブに本部を置く国連の外郭団体で、最も権威のある医療サイト認証団体とされており、その認証シールは海外著名医療サイトはもちろん、医療ブログなどにも多数の掲出実績がある。

今回のHONコード見直しは、現在世界的に医療関連サイトにも浸透しつつあるWeb2.0サービスへの対応が主たる目的とされている。具体的には従来のHONコード8原則を土台とし、それぞれの原則をWeb2.0の動向に合わせ細かく修正している。この修正HONコード案はHONサイト上で公開されており、それに対するアンケートページも設けられている。

思い返せばインターネット初期、HONやURACをはじめいくつかの認証団体が立ち上がったが、結局、それらのうちで残ったのはHONコードだけと言ってよいだろう。それは他の認証ルールが煩雑を極めたのに対し、HONコードが「8原則」だけで一番シンプルだったからだと思う。日本でも「JIMA」とか「JACHI」などという団体が「サイト認証」に取り組んだが、まったく普及しなかった。 続きを読む

闘病ユニバースの可視化

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今年は「世界天文年」の年らしい。たまたま、あるブログに貼られていたキャンペーンバナーを目にし、ようやく「世界天文年2009」の存在を知った次第だ。キャンペーンビデオもYouTube で見ることができる。ところでこのキャンペーンバナーだが、なんとなくTOBYOのシンボルイメージに似てるし、偶然とはいえ「闘病ユニバース」という考え方にも通じるところがある。

そのTOBYOだが、収録闘病サイトが14,000件を超えた。これで一応「国内最大級の闘病体験データベース」と言えるところまで来たわけだが、今後さらに収集を続けていきたい。これら多数の闘病サイトを収集整理する過程で、ウェブ上の闘病体験についてさまざまなことが徐々にわかってきた。たとえば、闘病体験を書きやすい疾患と書きにくい疾患があるらしい、ということである。おそらく患者数では最大であるはずの2型糖尿病だが、その闘病サイト数はむしろ少ない方だ。2型糖尿病の10分の1程度の患者数である1型糖尿病のサイトの方が、かえって多いくらいだ。ではなぜ1型が書きやすく、2型が書きにくいのか。このあたりは謎だが、なんとなくわかるような気もする。 続きを読む

闘病体験をどう見るか

一般に「闘病記」を語るときに、「勇気をもらえる」とか「元気が出る」などの表現が用いられることが多い。だが、これは本当にそうなのだろうか。何か歯の浮く過剰な美辞麗句に過ぎないような気もする。このブログでは、闘病者生成コンテンツのことを様々に考えてきたが、われわれ健康者の一方的な思い入れに基づき、勝手に「勇気をもらえる」などと言い立てるのとはまったく違う見方で、おそらく闘病者たちはこれらの闘病体験ドキュメントを見ているのではないか。ある種の反省とともに、正直なところ常にそんな気がしていたのである。

最近、ある前立腺がんの闘病者ブログを読んでいると、次のように記されているのを目にした。

昨日の朝日新聞beの記事にもTOBYO,ライフパレット、オンライフなどのサイトに闘病情報が得られるとあり誘惑にかられて早速画面を出したが表紙を見た時点で詳しく中を見るのは怖くなってすぐ閉じた
辛い苦しい悲観的な情報をみつけたら気の小さい私は当然落ち込む
夜などついつい考え込んでは調べてみたい誘惑にかられるが
朝になるとその気は失せる
それを知ったからといって病状が変わる訳ではないだろうから
家族が気を使って慰めにいい情報だけを伝えてくれるのは有難い
落ち込んだところでいいことはないがそれでも最悪の結果を覚悟し容認しようと努めている、今後の展開にそなえて心の準備が必要だ
この先、治療方法がはっきりしたら情報検索するかもしれない
段階的に気持ちは変わるのだろうと思う
情報社会で情報を避けるのもおかしなものだ

        「前立腺がん闘病記-4 」(「一言孤児」

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EHR普及遅れる米国医療界

今週のNew England Journal of Medicineで発表された調査結果によれば、EHR(Electronic Health Records)を導入している米国の病院はわずか9.1%にとどまり、EHRの包括的システムを導入している病院は1.5%、基本システムだけの導入は7.6%であることがわかった。

この調査はハーバード大学公衆衛生学部が実施したもので、AHA(全米病院協会)加盟のすべての急性期医療病院を調査対象としており、回答率63.1%、回答数は3,049病院。また、上記「包括的システム」とは、病院内のすべての診療科に設置されているEHRのことを指し、「基本システム」とは、数か所の診療科だけに設置されているEHRを指している。一般的傾向として、EHR導入実態は病院の「規模、立地、運営形態」と相関があり、導入率が高いのは「大規模病院、大都市立地、大学付属病院」であるとの調査結果になった。

EHRを導入しない病院側の理由は、「資金不足」(74%)、「メンテナンスコスト」(44%)、「医師の抵抗」(36%)となっている。
(以上iHealthBeat March 25, 2009より)

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頓挫したレセプト電子化・オンライン化

長年、日本医療の課題であったレセプト(診療報酬明細書)電子化・オンライン化だが、ここへ来て医療界からの猛反発に直面し先行き不透明になりつつあったが、結局、2011年に予定されていた義務化の実質骨抜きが決まったようだ。

政府・自民党は24日、具体的な治療内容や投薬名、診療報酬点数が書かれたレセプト(診療報酬明細書)のオンライン請求を平成23年度に完全義務化するとした政府方針について、新たに例外規定を設けることを決めた。この結果、23年度からの完全義務化は先送りされることが正式に決まった。
同日開かれた自民党の行政改革推進本部などの合同会議で、内閣府の規制改革推進室が、例外規定の設置方針を含む「規制改革推進3カ年計画」の改定版を提示し、了承された。(産経ニュース2009.3.24

レセプトデータの電子化は、医療費のムダを抑制し、医療の効率化を促進する基礎となる施策であるが、またもや先送りされてしまったわけである。費用の可視化および透明化は、すべての経済活動の前提的基礎であるが、なぜ医療だけが除外されるのか。今回、レセプト電子化に反対した日本医師会、歯科医師会、薬剤師会は、消費者に納得のいく説明をすべきであろう。これについて「地域医療の崩壊が促進される」などというわけのわからないロジックが出されているのだが、このような稚拙な説明は消費者を愚弄するものだ。 続きを読む