反復と新展開


先週から家人が近所の順天堂大学練馬病院に入院しているが、手術は無事終了し、回復も順調でほっとしている。今回、医療サービスの現状を実際に一人の患者家族として体験してみて、あらためてたくさんの気づきや学びを得ることができた。問題は山ほどあるが、とりわけ気になったのは医療現場におけるコミュニケーションの問題である。

なかでも基本は患者家族と医療者のコミュニケーションだが、これをもっと効率的にスムーズに進めることはできないものかと、苛立にも似た思いにかられる場面も少なくなかった。何もそう難しいものではなく、たとえばウェブを上手に利用し情報共有を促進するだけで容易に解決されるものだろうと確信したが、現実問題として、実際に声を上げ手をつけようとする者が医療現場に居ないと感じた。

また医療チームのメンバー間のコミュニケーションだが、それが果たして十分なものかどうか疑問符がつく場面にも遭遇した。今回のケースでは、手術前の外科医と麻酔医の説明がまったく食い違うものであり、患者をはじめ家族全員が困惑せざるをえなかった。業を煮やし「あなたがた医師団のコミュニケーションはきちんと取れているのか?」と当方が詰問する場面もあったのである。患者と家族に不信感を与えるような手術説明会とは、いったい何なのか?

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ブログのリニューアルに際して

今月はサーバ移転に取り組んできた。現時点でまだいくつか積み残した問題はあるものの、TOBYO本体をはじめおおよその移転は無事終了した。それにともない、懸案だった当ブログ・リニューアルにも着手した。これから徐々にパーツなどを加えていくつもりだが、ページがワイドになって見やすくなったと思う。いかがでしょうか。

TOBYOプロジェクトはTOBYO本体から出発して、dimensions、CHART、V-SEARCH、そしてAPIと少しづつ陣容を拡大してきた。しかしTOBYOプロジェクトのコアに位置するものがネット上に続々公開されている患者体験データであり、医療に対する膨大な量の患者の生の声であることは変わらない。従来これら患者体験に関わるビッグデータは、全く未整理のまま放置され、誰もこれを有用なデータとはみなしていなかった。だが、私たちは「メタデータDB + 検索エンジン」という技術をベースとして、これら患者の声を縦横無尽に抽出・集計する基本システムを開発し、さまざまな分野でデータを有効に利用してもらう道が少しづつ開けてきている。

dimensions開発では「プロフェッショナル向けツール」ということを意識していたわけだが、その後、いわば「患者の声を患者に戻す」ようなフィードバック回路を創造することも大切だと考えるようになった。この春からCHART、V-SEARCH、そしてこれらの機能をより広くあらゆる場所で柔軟に利用してもらうためのAPI開発に取り組んできたのも、「患者の声を患者自身が最大活用する」ことを実現するためである。

闘病者、研究者、医療者、サービス・プロバイダー、メディアなどさまざまなプレイヤーに「患者の生の声」を簡単に便利に使ってもらえるように、今後も努力していきたい。このブログでは今後も「患者体験、患者の声」をコアとする新しい医療ビジョンを提起していきたい。

三宅 啓   INITIATIVE INC.

インサイト・メーカーは誰か?

Still_Life

まだまだ残暑厳しい毎日。夏の疲れもでてくる時期。当方では、家人が来週から手術入院することになった。春先から調子を崩していたが、この夏、よもや想定していなかった診断を受け本人の希望どおり手術をうけることになった。

患者家族の立場から、あらためてウェブ上の医療情報のありがたみを痛感したが、一方では各種検索サービスや病院サイトなど、まだまだ利用者ニーズを十分に斟酌したサービスとは残念ながらいいがたいと感じた。ユーザーが欲しているのは、あることがらについての比較情報であるのに、探索経路・動線が直線的に設計されていて非常に使いにくい。たとえば、医療機関を横断的に比較一覧できるような仕組みが必要だと強く感じた。また病院サイトはもっとユーザーとコミュニケーションする仕組みを持つべきだろう。各病院のサイト構成はまさに十年一日で、なんの進化もない。

「利用者ニーズを十分に斟酌する」ということだが、従来のセオリーで行くと、これには有効なマーケティング・リサーチが必要だということになる。当方では昨年春頃から「リサーチ・イノベーション」というテーマに注目してきたわけだが。従来のレガシーなアンケート調査やインタビュー調査にかわり、新たにソーシャル・リスニングやMROCやコミュニティ・パネルなどが相次いで出てきて、にわかにマーケティング・リサーチ分野は従来にない活況を呈している。

当方開発の患者リスニング・プラットフォーム「dimensions」はこれらのリサーチ・イノベーションと同じ方向を向いていると考えているが、違うところをあえて挙げるとすれば、それは「リサーチャーの介在」を前提とはしていないという点だろう。端的に言うと、「調査レポート」みたいな成果物をオプション化し、サービスのコアはあくまで「インサイト・メーカー」(クライアント企業)自身が利用するツール提供に特化している点だ。 続きを読む