反復と新展開


先週から家人が近所の順天堂大学練馬病院に入院しているが、手術は無事終了し、回復も順調でほっとしている。今回、医療サービスの現状を実際に一人の患者家族として体験してみて、あらためてたくさんの気づきや学びを得ることができた。問題は山ほどあるが、とりわけ気になったのは医療現場におけるコミュニケーションの問題である。

なかでも基本は患者家族と医療者のコミュニケーションだが、これをもっと効率的にスムーズに進めることはできないものかと、苛立にも似た思いにかられる場面も少なくなかった。何もそう難しいものではなく、たとえばウェブを上手に利用し情報共有を促進するだけで容易に解決されるものだろうと確信したが、現実問題として、実際に声を上げ手をつけようとする者が医療現場に居ないと感じた。

また医療チームのメンバー間のコミュニケーションだが、それが果たして十分なものかどうか疑問符がつく場面にも遭遇した。今回のケースでは、手術前の外科医と麻酔医の説明がまったく食い違うものであり、患者をはじめ家族全員が困惑せざるをえなかった。業を煮やし「あなたがた医師団のコミュニケーションはきちんと取れているのか?」と当方が詰問する場面もあったのである。患者と家族に不信感を与えるような手術説明会とは、いったい何なのか?

そのうちに今回体験した事実をドキュメントにまとめようと考えている。そう言えば、手術の待ち時間に自民党総裁選挙をぼんやりテレビで眺めていたが、六年前の九月も父の胃癌の手術時に癌研有明病院で自民党総裁選放送を見ていたのを思い出した。奇しくも、どちらの総裁選挙も安倍晋三氏が勝利したのだ。なんとも奇妙な巡り合わせである。この「反復」をどう解釈すればよいものだろうか。あるいは「歴史は二度繰り返す。一度目は悲劇として、二度目はファルスとして・・・・・・」とでも言うべきか。

六年前といえば、TOBYOプロジェクトはすでに構想として動き出していたのだが、プログラマのスケジュールが空かず、サイト開発は棚上げ状態で切歯扼腕していたのを思い出す。当時、闘病サイトの収集もはじめていたが、2千件ほど集めて「もう十分だろう」とストップしていた。それが六年後にまさか3万7千件にまで達していようとは、想像さえできなかった事態である。

考えてみると、TOBYOプロジェクトはその初動とはかなり違う展開をすることになった。立ち止まって周りの風景をよく眺めてみると、そこにまったく予期せぬ光景が広がっているのに驚かされる。少なくとも現時点ではっきり言えることは、この春から取り組んできたAPIが、今後のプロジェクト全体の趨勢を決定づけることになるだろうということだ。「APIを介する、他者との社会的コラボレーション」へとTOBYOプロジェクト全体は舵を切ったのである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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