闘病データと参加型医療

Ume2

先々週の風邪は治ったものと思っていたが、まだ本調子ではない。妙に暖かくなったかと思うと、今度はいきなり厳しい寒波襲来と、ここしばらく続く天候不順が原因か?

とは言え、春に向けTOBYOプロジェクトは行動して行く。収録闘病サイト数はようやく1万9000件に達した。ここのところ以前に比べ収録テンポを落としてきたが、これは従来よりも収録サイト選定に時間をかけているためだ。データ量、アクセシビリティ、トーンなど、本当に紹介したいサイトだけをかなり吟味している。今後、闘病DBから様々な形でデータを出力する予定だが、データソースの品質がますます重要になるからだ。

先週、「患者SNSと社会的イノベーション」というエントリをアップしたが、これを書き終えてTOBYOプロジェクトの位置づけがはっきりしたと思っている。もちろんTOBYOはSNSではないが、PatientsLikeMeとTOBYOプロジェクトは表面的にはまったく異なるサービスであるとは言え、実は根っこの部分で共通点があることに気づいたからだ。

「患者」(あるいは「闘病者」)というこれまで受動的だった存在を積極的に参加させることによって、医療を効率的なシステムへと変えていく。このことがウェブによって可能となったのだ。その「参加」は決してハードルの高いものではなく、手っ取り早く言えば、自分の闘病記録をウェブに公開すればとりあえず実現するようなものだ。参加型医療とは、何も医療機関や患者団体と具体的で濃密な関係を取り結び行動するようなものとしてではなく、単にブログサイトを開設し自分の闘病体験を記録し公開するだけで、その「参加」が軽々と実体化するような、そんな軽快なイメージなのではないだろうか。

自分のブログに自分の闘病体験を書きネット上に公開するだけで、その人は医療に参加している。その参加の仕方がタイトかルースかは問題ではない。なぜなら、その人が公開したデータは自然にフローし始め、アグリゲートされ、構造化され、巡り巡っていつかきっと社会に役立つことになるからだ。そして最終的に医療を変えることになるからだ。それがネット的な闘病体験データのあり方だと思う。「闘病記」というパッケージは無用だ。データだけが決定的に重要なのだ。その闘病体験データの社会的還流を、PatientsLikeMeもTOBYOも目指していると思うのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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