TOBYOのプロジェクトミッション

現在、TOBYOプロジェクトは検索エンジン「TOBYO事典」の改善に取り組んでいる。思えば昨年9月以来、この仕事を延々続けてきたわけだが、1月10日公開したものをさらにパワーアップすべく調整中である。あと少しでパワーアップ版を公開できるだろう。さて昨春から、TOBYOプロジェクトのミッションについてこのブログで様々に考察してきた。すでにお気づきのとおり、プロジェクトミッションは徐々に変わってきている。

その中でも一番大きな変化は、昨夏あたりに計画していた「量から質へ切り替えていく」との路線を変えたことだと思う。これは、闘病記を1万件集めた時点で実行するはずだったが、結局、さらに拡大させていくことの方を選択した。TOBYOが闘病ユニバースというオープンな巨大コミュニティを想定し、そのインフラツールを目指すとすれば、可視化の対象は1万件で終わらせるのではなく、むしろ闘病ユニバース全体でなければならない。そう考えたからだ。

今の時点で、TOBYOプロジェクトのミッションを言うとすれば次のようになるだろう。

闘病ユニバースに存在するすべての闘病体験を可視化し、整理し、アクセスできるようにすること。

なにやらGoogleさんの物言いに似てきたが、ある意味、闘病ユニバースに限定特化したGoogleみたいなものを、TOBYOプロジェクトは目指していることになる。そしてさらに言えば、Googleのような汎用検索エンジンでは対応しにくいディープウェブ検索に特化することで、ある特定分野では汎用検索エンジンにも優るとも劣らない存在となることを目標としている。

たとえば今日、汎用検索エンジンで闘病記を探そうとすれば、相当の根気と時間が必要になる。ウェブ上の情報の爆発的拡大によって、スパムサイトをはじめゴミのような情報があふれ、本当に欲しい闘病体験情報にたどり着きにくくなっているからだ。これに対しTOBYOは、汎用検索エンジンと違い闘病サイトだけを検索対象とし、闘病体験検索に特化しているから、純粋に闘病体験だけから自分に必要な情報を探し出せる。つまり、汎用検索エンジンよりも、短い距離で求める闘病体験へ到達できるのだ。

そして次に、医学情報や薬剤情報や医療機関情報ではなく、なぜ「闘病体験」なのかという問題に改めて逢着することになるだろう。私たちのその問いに対する答えは、「なぜなら、闘病者の体験こそがすべての医療情報を結び合わせ、すべての医療情報の起点ともなるからだ」というものである。

従来、医学情報、薬剤情報、医療機関情報、医療費情報などは、それぞれの個別DBやサイトに別個に存在していた。だがそれらの知識や情報は、ただ実際の闘病者によって生きられた体験の中でのみ総合化され、具体的かつ実践的な意味や価値を発揮するのである。患者という存在は、それに先立つ医学理論の単なる実験素材では決してない。逆に患者という存在が、医学あるいは医療に対しア・プリオリな存在であるはずだ。患者と医療の従来関係の転倒によってしか、新しい医療のビジョンを開くことはできないだろう。そんなことを最近考えることが多い。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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