開発シーズとしてのコアデータ

Shinjuku_091104

新バージョン「闘病体験バーティカル検索エンジン=TOBYO事典」の公開はずいぶん遅れているが、これは新しいクローラーの開発に時間がかかったことと、将来へ向け大量のデータを処理できるように検索システムの分散化を図ったためだ。バーティカル検索機能を持つだけなら他の選択肢もあるのだが、少々時間はかかっても、自前の検索エンジンを持つことは、TOBYOプロジェクト全体において最も重要な開発ポイントであると考えている。

闘病体験情報は医療のコアデータの一つであるが、ユーザーはバーティカル検索エンジン=TOBYO事典によってこのコアデータを縦横無尽に検索できるようになり、闘病者が病気と戦うための情報探索労力は一挙に軽減されるだろう。私たちはまずこのことを目指している。

そして次に、検索のために集められた膨大なコアデータの二次利用、三次利用の分野が広がっている。たとえば、日本の闘病者の言語空間を可視化することが考えられる。医療機関、薬品、治療法などの固有名詞群に対し、闘病者が体験した事実とその感想にかかわる言葉がどのように関係しているかを可視化し分析することが可能となるだろう。これは「医療を患者が体験した事実から見る」ということ、つまり患者視点の医療評価の実現に直結する。ここに新しい医療評価サービスのチャンスがある。

あるいは特定の医療体験によって闘病者をグルーピングしなおし、今までその関係が目に見えなかったグループに、新しいサービスを提供するような事業構想が出てくる。従来、誰もが思いつくのは「同じ病気同士」という闘病者グループだった。しかし、たとえば「同じクスリを飲むグループ」、「同じ医療機関で受療するグループ」、「同じ治療法を選択したグループ」などがコアデータによって可視化されるだろう。それらはコミュニティに進化するかもしれないし、また外部プレイヤーと接点を持つことによって、何らかのインセンティブを受け取るかもしれない。ここに、外部プレイヤーと闘病者を結びつけることによって、新しい医療情報サービスのチャンスが生まれる。

このようにTOBYOプロジェクトは、「闘病体験=コアデータ」を開発シーズとする、新しい医療情報サービスのプラットフォームを目指している。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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