集合知への接続: Health2.0サービス設計

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街に春一番が吹き、今日は一挙に春めいた陽射しがいっぱい。新宿御苑の梅も満開。昨日土曜日は終日音楽を聞いて過ごした。正月からカートリッジとヘッドフォンを新調し、夜ごと自宅で音楽を聞くのが楽しい日課になっているが、やはりスピーカーから直に出る音を聞くのは格別だ。

さて、先日「医師による医療機器評価サイト」というエントリをポストしたが、アクセス数が多く、たくさんの方々が注目して読んでくださったようだ。あのエントリでは舌足らずであったが、実は「ユーザー集合知との接続」という問題を今更ながら考えることが最近多い。「どんな集合知と、どのチャネルを通して、どう接続するか」というシンプルな問題の立て方が、Health2.0サービス設計の基本なのかも知れないと思うようになってきたからだ。とにかく集合知という一番基本的なファクターをどのように活用するか。ここがHealth2.0の肝なのだという思いが、ますます強くなってきている。 続きを読む

疼痛など主観的事実を可視化する: dimensions

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dimensionsは薬品、治療法、医療機関、医療機器など医療関連固有名詞をキイとして、患者が体験した事実を可視化することをめざしている。現在、バグフィックス中であるが、追加機能や用途についていろいろなアイデアが浮かんできている。

薬品など固有名詞によって可視化されるのは患者が体験した事実だが、これはもちろん客観的な事実である。従来、患者体験は「闘病記」というパッケージで一括され、どちらかと言えば「作品コンテンツ」みたいに捉えられてきた。そうではなく闘病ドキュメントを闘病者が実際に体験した「事実」の集合体と捉え、それら事実群によって構成される「次元」を抽出することによって、医療現場で何が起きているかを可視化しようというのがTOBYOプロジェクトの基本的な立場である。

だが、客観的事実だけでなく、患者が体験した「主観的な事実」というものが一方には存在している。では闘病体験の中で最も重要な「主観的事実」とは何かと考えると、それはまず「痛み」だろう。「痛み」は唯一患者だけが体験する主観的事実である。そして実際に闘病体験ドキュメントにおいて、「痛み」について言及されることはきわめて多い。たとえば関節リウマチ患者の体験ドキュメントなどで、日々の痛みの頻度や程度が克明に記録されているケースをしばしば目にする。痛みの発生を時間表でマークしたり、痛みの程度を5ランクなどランキングや数値で表現したり、さまざまな主観的尺度が工夫され「痛み」の記録があちこちの闘病サイトで生成されている。痛みのほかにも、「気分、かゆみ、膨満感、吐き気」など多彩な主観的事実の記述は、闘病体験ドキュメントの多くの部分を占めているのだ。これらデータをどのように可視化し活用するかということも、dimensionsおよびリサーチ・イノベーションの大きな課題であると、最近になって認識し始めている。 続きを読む

医師による医療機器評価サイト”Which Medical Device”

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昨年ローンチされた医療機器評価サイト“Which Medical Device”は、医師が「どの医療機器を使うか」を決める際に必要な、全ての情報を提供することをめざしている。現在は心臓病、IVR、整形外科の機器が対象。

このサイトが提供する情報は、機器メーカー情報(資料、写真、ビデオ)、紹介記事、ユーザー・レビュー、ディスカッション・フォーラムなど。基本はメーカー提供の機器情報を有料掲載し、それにサイトスタッフの紹介記事、さらに会員医師ユーザーの使用体験レビューやディスカッションフォーラムなどの評価情報が付加されるというものだ。つまりこれは医療機器商品広告を軸とした、医師の使用体験など集合知を共有する仕組みといえるだろう。

ビジネスモデルは商品情報(=広告)掲載費がベースとなる。広告を定型フォームで集約して医療機器データベースを構築し、それにユーザーの集合知を生成付加する。要約すればそんな感じか。たしかに、収益性とユーザーベネフィットを両立させるうまい考えだ。 続きを読む

シュルレアリスム展

Surrealisme

「シュルレアリスム展」(国立新美術館)を妻と見に行った。ポンピドゥーセンター所蔵作品で、ダダから戦後アンフォルメルまでを含む。ブルトン、ピカビア、ミロ、キリコ、マン・レイ、エルンスト、マグリット、デュシャン、ダリ、タンギー、ポロック。この展覧会でシュルレアリスムの流れが一通りわかる。思ったよりも大規模な展示でたっぷり楽しめたが、人も多かった。シュルレアリスムといえば、どうしても1920年代-30年代の作品群が思い浮かぶが、その流れは1960年代に及ぶ。20世紀を貫くムーブメントであったことを再確認。自動記述などその実験的手法と挑戦精神は、いまだに色あせることはない。 続きを読む

三周年

camjatan

昨日、2月18日。TOBYOはサイトオープン3周年を迎えた。夕方、早々に仕事を切り上げ、事務所から明治通りを歩いて東新宿方面へ向かい、新大久保はずれの韓国家庭料理屋へ。午後から急に風が冷たくなったが、暖かいカムジャタン(写真)をつつき、薬缶に入ったマッコリを飲みながら、奥山とこの三年を語り合った。

収録サイト2,000でスタートしたTOBYOは、三年経って収録2万6千サイトと文字通り国内最大の闘病サイトライブラリーに成長した。当初なかった闘病サイトだけを対象とするバーティカル検索エンジンも稼働している。そして昨年から開発に着手したdimensionsも、基本開発段階を終えデビューを待っている。振り返ってみれば、三年という時間がどうしても必要だったと思う。

Health2.0関連のビジネスモデルがweb2.0一般のそれとはかなり異なることは、再三、このブログで指摘してきているが、TOBYOの場合、収録サイト数や検索インデックスページ数など量的蓄積のための時間が必要だった。では2万6千サイトで十分かと言えば、まだまだと思う。医療におけるリサーチ・イノベーションを実現する最低水準は2万サイトぐらいだが、もちろんデータは多ければ多いほどよい。三年経ってようやくリサーチ・イノベーションをはじめ、さまざまなチャレンジを実現する基礎が固まったというところだろう。 続きを読む