「サイト認証」という時代錯誤

医療関連ウェブサイトの国際認証団体であるHON(Health On the Net Foundation)が、その認証基本ガイドラインである「HONコード」の修正を計画している。HONはジュネーブに本部を置く国連の外郭団体で、最も権威のある医療サイト認証団体とされており、その認証シールは海外著名医療サイトはもちろん、医療ブログなどにも多数の掲出実績がある。

今回のHONコード見直しは、現在世界的に医療関連サイトにも浸透しつつあるWeb2.0サービスへの対応が主たる目的とされている。具体的には従来のHONコード8原則を土台とし、それぞれの原則をWeb2.0の動向に合わせ細かく修正している。この修正HONコード案はHONサイト上で公開されており、それに対するアンケートページも設けられている。

思い返せばインターネット初期、HONやURACをはじめいくつかの認証団体が立ち上がったが、結局、それらのうちで残ったのはHONコードだけと言ってよいだろう。それは他の認証ルールが煩雑を極めたのに対し、HONコードが「8原則」だけで一番シンプルだったからだと思う。日本でも「JIMA」とか「JACHI」などという団体が「サイト認証」に取り組んだが、まったく普及しなかった。

今回の修正案を読んでみると、HONコードでさえも煩雑感を持ってしまう。Web2.0に対応するとのことだが、そもそも「サイトを認証する」という規制発想が2.0と両立するのか疑わしい。いまどき「サイト認証」などを誰がありがたがるだろうか。「医療情報だけは他の情報と違うのだ」という医療情報を特別扱いする発想が透けて見えるのだが、過去はともかく、これは今でも説得力があるといえるだろうか。

「医療サイト認証」という発想自体に、もともと矛盾があり無理があるのではないか。少し考えてみればわかることだが、「認証サイト」に毎日アップされる大量の医療情報を、はたして逐一チェックできるものだろうか。本当にこれをやろうとすると、膨大なマンパワーが必要だが、では誰がこのコストを負担するのか。現実的には不可能なことを、見せかけのもっともらしさで取り繕っているようにしか見えないのである。こんな非現実的なことよりも、ユーザーの医療情報リテラシーを向上させる方が重要である。すべての医療関連サイトにある医療情報の信頼性の可否を、特定少数の認証団体が判定することは不可能だが、一定のリテラシーを持ったユーザー集団が、それら医療サイトを評価し淘汰していくことになるのではないか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>