昨年2月、TOBYOアルファー版を公開したとき、いろんな人から感想や質問をいただいたが、それらは概ね次のようなものだった。
「闘病記の単なるリンク集か?」、「ブログランキングみたいなもの?」
これら私たちに向けられた当時の感想や疑問は皆、ごもっともなものであった。だがごもっともなゆえに、いちいち反論するつもりもなく、私たちは闘病ユニバースを可視化するために、ひたすらメタデータを付けながらネット上の闘病体験データを分類整理していった。闘病ユニバースのコアデータを十分に集めることによって、ようやくTOBYOは次の段階へ進むことができるからだ。いずれにせよ、TOBYOプロジェクトの最下層にあるのはデータ・レイヤーである。
次の段階とは世界初の闘病体験バーティカル検索エンジン=TOBYO事典のことであり、昨年5月末に最初のバージョンを公開した。当初、インデックスページ数は約30万ページに過ぎなかったが、これは今年1月には100万ページ、5月には1万サイト200万ページへ拡大し、クローラーや検索精度にも改良を加えてきた。今月公開予定の新バージョンでは1万4000サイト290万ページになる。これがデータ・レイヤーの上にあるサーチ・レイヤーである。ところでこの第二レイヤーで、私たちに向けられた質問は次のようなものであった。
「ビジネスモデルはどうなっているのか?広告か?」、「検索エンジンだけでマネタイズ出来るのか?」
これらの質問もまた、ごもっともなものであった。だが将来のビジネスへ向けた具体行動、たとえばアクセスやPVを稼ぐためのSEOや広告など何一つすることもなく、ただひたすらクローラーを走らせ検索インデックスを蓄積していった。そのことによってのみ、次のレイヤーに進むことができると考えていた。なぜなら「Data is Next “Intel Inside”」だからである。
そして第三のレイヤーだが、これは第二レイヤーのサーチ機能を土台として、さらに一層精緻に膨大なデータを調査分析(医療評価)するとか、闘病サイトと外部プレイヤーを結びつけて新しいコミュニケーションを生み出すようなレイヤーになる。最初は、これらからなる活動レイヤーを「プラットフォーム」という言葉で捉えていたが、よく考えてみるとこのレイヤーで行われる活動は、下層レイヤーに蓄積されたデータに基づくマーケティング活動であると気づいた。第三レイヤーはマーケティング・レイヤーである。
今後もTOBYOはデータ・レイヤーのデータ蓄積を継続していく。現在1万8000サイトまで可視化できたが、これは今後も拡大していかなければならない。これについては故戸塚洋二氏の構想「一つの疾患あたり100症例以上」が目安になる。現在TOBYOでは、100サイト以上の疾患は38 39疾患だが、これをさらに増やしていかなければならない。そして当然ながら、サーチ・レイヤーの検索エンジンの改良にも引き続き取り組む。
そして最後に第三レイヤーの具体化だが、もうすでに基本的なアイデアは作ってある。これからのディテール詰めを、じっくりと存分に楽しみたいものだ。
三宅 啓 NITIATIVE INC.