医療評価: JCAHOに競争をいどむDNV

DNV

これまで「医療評価」と言えば、それはJCAHO(現JC)  のことを指していた。数年前、私たちは患者視点の医療評価システムを構築しようとしていたが、とにかくまずはともあれ、最初に研究しなければならなかったのはJCAHOの歴史とシステムであった。とにかく「医療評価」の世界でJCAHOを知らなければ話にならない。そのようにJCAHOは間違いなく医療評価のデファクトスタンダードの位置にあり、我が国の日本医療機能評価機構  もJCAHOをモデルとして設立されている。

ところが今年に入って米国の医療ブログ界を見ていると、「ウチの病院はJCAHOの継続加入を打ち切った」などというエントリをあちこちで目にするようになった。「何が起きているのだろうか?」といぶかっていたのだが、ようやく徐々に事情が判明してきた。なんとJCAHOに手ごわい競争相手が現れたのである。そのコンペティターとは、ノルウェイからJCAHOの牙城に乗り込んできたDNV(Det Norske Veritas)である。DNVはノルウェイで1864年に創設され、当初はノルウェイ商船の安全性や技術水準などの海運評価サービスに従事していたが、その後リスクマネジメント分野へ、さらに医療評価分野へと事業領域を拡大していったのである。

DNVはNIAHO(National Integrated Accreditation for Healthcare Organizations)という独自の医療評価システムを開発し、JCAHOの盲点であったISOなど国際規格にも対応しており、昨年9月に米国CMS(Centers for Medicare and Medicaid Services)から正規の医療評価システムとして認可を受けている。

JCAHOとの差別化としては、ISO規格対応と「患者の安全性、病院財務、そして医療ITシステムに至るまでの統合的医療評価」を打ち出している。たとえばEHR導入など、新たな医療評価項目が登場している中で、従来のJCAHOの評価システムは十分に対応できているとは言えず、このあたりのJCAHOの弱点をDNVは突いてきている。

また、DNVのYehuda Dror社長は次のようにも述べている。「われわれの評価サーベイヤー(調査員)は単に調査スキルだけではなく、病院側に対し協同的なアプローチをしていくところが従来とまったく違うところだ。過去においてJCAHOの評価サーベイヤーは、病院に対して、ともすれば闘争的な態度に出ていたが、そんな必要はないのだ。われわれは、医療評価というものは喧嘩腰でおこなうものではないと信じている」。

DNV社長のこのコメントを読むと、日本における医療機能評価機構の「評判の悪さ」のことを思い出してしまう。単独プレイヤーが独占する市場というものは、どうしても顧客を見下したり無視してしまうものらしい。その意味でDNVの参入が米国の従来の医療評価を、今後どのように変えていくかに注目したいし、日本でも医療機能評価機構以外の新たなプレイヤーの登場が望まれる。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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