ビジュアルな病院ランキング・ツール

netdoc

NetDoc.comにある病院ランキングツールは、GoogleMapsAPIをマッシュアップして、特定エリアの病院の品質ランキングをビジュアルに表示できる。品質ランクは五段階で、視覚的に把握しやすいカラーマーカーを使用している。

ランキングデータはHHS(保健社会福祉省)の全米病院調査結果から、心臓発作、心不全、肺炎、外科感染予防の4カテゴリーのベンチマークデータを利用している。郵便番号で場所を指定すると、GoogleMaps上のマーカーで病院ランクが一目でわかる。さらにマーカーをクリックすると4カテゴリー品質のスコアが表示される。非常に軽快で使いやすい。

このような軽くシンプルなアプリケーションが、もっと医療分野にも出てきてよいのではないか。すでにウェブ上に大量に存在するデータを、マッシュアップで見やすく便利に利用しやすい方法で提供するという発想が、実に2.0的だ。これに対し、データからコンテンツまですべてを自前で作ろうとするのは、WebMDのような「1.0サービス」ということになる。

だがアメリカの場合、HHSやCMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)など公的機関によって、病院品質評価データが多数公開されているから、このようなサービスが可能になる。日本だと、ほとんどこのようなデータが存在しないので、病院レーティング(ランキング)関連のサービスは非常に貧弱である。いろいろな人から「なぜ日本の医療ウェブサービスは不活発なのか」と聞かれるが、そもそも病院評価データ(特にアウトカムデータ)がほとんど存在しないために、基本的な医療機関比較サービスさえ十分には開発できないという問題がある。また、しっかりしたデータが公開されないため、統計的に意味の薄いデータを、さも信頼性があるように見せかけるようなインチキ・ランキングさえ出てくるのだ。

また、日本医療機能評価機構は病院の審査をおこなっているが、しょせん「構造と過程」についての審査項目だけであり、アウトカム(結果)は把握しておらず、しかもどうやらこの団体は消費者や闘病者の方へではなく、医療界のほうへ顔を向けているようだ。

日本とアメリカの医療制度については様々な見方があるだろう。しかし、医療の透明性を確保する病院品質開示という点では、アメリカのほうがずっと進んでいることは間違いない。これは一消費者として、また医療ウェブ開発者としてうらやましい限りだ。

近隣に存在する病院、そして目の前にいる医師が、どの程度の品質、技量、実績をもっているのか。その客観的なデータを消費者は一番知りたがっているが、日本でそれらを知る手だてはほとんどないのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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