2010年が終わる。長いような短いような1年だった。例年にない暑い夏から始まった新規ツールdimensions開発は大幅に遅れ、結局、年末に完成した。「暑い夏。音楽を聞いて乗り切ろう」と発注したマーラーのコンプリート・エディションだったが、これも到着したのは12月に入ってから。何か「夏の忘れ物」が届けられたようで不思議な気がした。
今年はまたHealth2.0ムーブメントが国内でも顕在化した年であった。二回にわたるHealth2.0 Tokyo Chapterはいずれも盛況。その勢いを駆って、10月サンフランシスコで開催された年次コンファレンスでは、日本からMedPeerとTOBYOのプレゼンテーションが行われた。だが国内プレイヤーの数が少なすぎるなど、まだその実体は脆弱であり、今後新規参入プレイヤーが多数現れてこない限りかけ声倒れに終わる可能性もある。
また「新規ブーム」に便乗し、煽るような動きもすでに散見される。かつての「ニューメディアブーム」等のように「結局、評論家、学者、コンサルなどがセミナーや本で儲けただけ」という結末を、あるいは迎えることになるのかも知れない。そうならないためには、事業プレイヤー同士の経験交流、意見交換、コラボレーション促進など、あくまでプレイヤー主体の場作りが重要になるのではないか。特にプレイヤー間のコラボレーションを積極的かつ具体的に進めていくことは、日本のHealth2.0シーンの活性化にとって非常に大切なことだと思われる
ところで最近、ウェブの変化ということが話題になっている。オープンで分散したウェブから、閉鎖的で独占されたウェブへの変化の兆しが指摘されている。たしかにツイッターやフェースブックなどは「ソーシャルメディア」と呼ばれてはいるが、一方ではクローズドにユーザーを囲い込むシステムでもある。このような独占的ソーシャルメディアへの過度の集中は、従来のウェブの姿を大きく変えつつある。このことがHealth2.0に、今後どのような影響を与えていくのか注目したい。
さて、当方のTOBYOプロジェクトだが、前回エントリでも触れたように「データ構造化→垂直検索→多次元分解」という三つのステージを経てきた。dimensions開発によっていよいよ第3ステージにプロジェクトは移行しており、ウェブ上の闘病体験データを本格的に医療プロバイダー、サプライヤーが活用できるようになる。このようなサービスはもちろん国内初だが、海外を見渡してもイスラエルのファースト・ライフ・リサーチだけという未踏領域である。未踏領域であるだけに、闘病体験データの用途開発ひとつとっても、広く各方面の協力を仰がなければならない。オープンなコンソーシアムのような産学協同プロジェクトが必要になるかもしれない。
ウェブの新展開、Health2.0、dimensions、闘病体験コンソーシアム。2011年は大きな変化の年になるような予感がする。
三宅 啓 INITIATIVE INC.