昨日、六本木アカデミーヒルズのスカイスタジオで第二回Health2.0 Tokyo Chapterが開催された。開催告知が盆休みと重なり、人の集まり具合が懸念されたが、会場はほぼ満員状態。Health2.0に対する関心の広がりを再認識した。
まずSMSの鈴木さんから、6月ワシントンDCで開催されたHealth2.0コンファランスの報告があり、canAvert、Everday HEALTH、Vitalityなどが紹介された。続いて当方からTOBYOと開発中のDFCのプレゼンテーションをおこなった。この間、プレゼンを準備する過程で実はいくつかの「気づき」があった。まず、これまで「仮想コミュニティ=闘病ユニバース」という考え方をこのブログで書いてきたが、むしろ当方はネット全体を一つのコミュニティとして見ているのだということに気づいたのだ。ただ、今回のプレゼンではこの新しい考え方を展開することはやめた。もう少し時間をかけて検討してみたい。
ただこれに関連して言えば、これまで当方はたとえばFACEBOOKなどSNSに対して、いまいちなんとなく違和感を持っていたのだが、そのことの理由がわかった。ネット全体を一つのコミュニティと見るならば、その中にFACEBOOKのようなコミュニティを作ることは、いわば「コミュニティの中にコミュニティを作る」ようなものである。こんな入れ子構造は囲い込みのために必要なのだろうが、よくよく考えてみると変なものである。だがFACEBOOKのツール類のように多彩で便利なものは「ネット全体コミュニティ」にはない。あえて言えば、たとえばGoogleはそれを目指しているのかもしれない。「ネット全体を一つのコミュニティと見て、Googleはそのインフラツールになる」という欲求にGoogleは突き動かされてきたのかも知れない。
また、DFCでこれまで漠然と「固有名詞抽出をコアとする情報探索」という考え方をしてきたが、これを「こと、もの、評価」という三要素から闘病体験ドキュメント構造を捉える方向へ修正した。従来言ってきた「固有名詞」は、今回の三要素区分によれば「もの」に含まれる。最初のバージョンのDFCでは主として「こと、もの」の抽出と時間軸上へのマッピングが中心となる。
さて、今回のHealth2.0 Tokyo Chapterではうれしい再会もあった。名古屋大学の立川先生とは一年ぶりの再会。ブログは拝見していたが、実際にお会いしてお元気そうでなによりである。渡辺さんは二年前お会いしたときは経産省にお勤めだったが、今回再会するとアマゾン・ジャパンに移籍されていた。お二人の今後のご活躍を祈ります。
さて、Health2.0 Tokyo Chapter2の後半は「日本のHealth2.0」をめぐるパネル・ディスカッション。司会は「Health2.0の若大将」ことメディエイドの杉山社長。パネラーはメドピア石見社長、FHヘルスケアの永田代表それに当方。短時間ではあったが、このパネル・ディスカッションで日本のHealth2.0が直面する問題が多面的に可視化され、参加した当方にとっても非常に有意義だった。また、たまたま話題に出した女性向け健康管理サービス「ルナルナ」だが、当事者であるテラモバイルの中山さんが目の前の席に座っておられることが判明し、本当にびっくりした。こんなこともあるのだ。
日本のHealth2.0の直面する問題の一つは、特にB2Bモデルを考える場合、Health2.0プレイヤーと製薬会社など従来プレイヤーとの間に距離があることだと思う。これはベンチャー企業とエスタブリッシュメント企業の間の距離と言い換えてもよいだろう。一般にソーシャルメディア受容については、エスタブリッシュメント企業側に相当の遅れが目立つ。「ソーシャルメディア・マーケティングの時代」と言われるようになったものの、まだまだエスタブリッシュメント企業社会の反応は鈍い。
会場から第一三共の佐野さんが発言されたが、Health2.0が置かれている現状を認識するには貴重なご意見だと受け止めた。パネルの後、佐野さんとお話したが「エスタブリッシュメント企業とベンチャーの協働」のような話になり納得した。当方はエスタブリッシュメント企業と敵対するつもりはない。そんなことではB2Bモデルは成立しない。だが、今時の日本の企業社会全体の保身ぶりを見ると、ときとして苛立つことが多いのも事実だ。
その後会場をハートランド六本木ヒルズに移し懇親会。とにかく収穫の多いHealth2.0 Tokyo Chapter2であった。石見さん、杉山さん、ありがとうございました。比木さんはじめ事務局の皆さん、そしてご参加いただいたすべての皆さん、ありがとうございました。
三宅 啓 INITIATIVE INC.
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