8月の終わりに

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今日で8月が終わる。例年この時期になると、夏が終る兆しをあちこちに目にして、じわっと「逝く夏を惜しむ」気分が漂いはじめる。しかし今年は、夏が終わる気配が微塵もない。炎暑は続き、熱風が吹き、蝉は鳴き、あたかも「Endless Summer」が現実のものとなるかのようだ。

年初から取り組んできたDFCだが、今月、サイト・デザインが完成しデータベース設計が始まった。まずまず順調に開発は進んでいると言えるだろう。10月末には、実際にデモンストレーションやユーザー試用が可能となるはずだが、この時分にはもう夏は去っているだろう。とにかく今までまったく存在していなかった新しいシステムなので、どのように受容されるか不安はあるが、医療分野に一つのイノベーションをもたらす可能性をはらんだ開発に取り組むことは、私たちにとって大きな誇りである。やはりベンチャーである限りは、なんらかのイノベーションを目指し挑戦しなければ、との思いは強い。

私たちがTOBYOやDFCを開発することによって実現しようとしていることは、医療に新しいデータ・フロー・チャネルを作り出すことだ。従来、患者をソースとする医療データは、医療機関、検査ラボ、研究機関、保健行政などによって記録され様々に保存されてきた。EMR-EHR-PHRなどの医療IT系システムはこれらを統合することになるが、ここには患者体験記録(闘病ドキュメント)など患者が創りだした定性データは含まれていない。だが現にソーシャルメディアから個人の医療体験情報が大量に配信されており、今後これがさらに拡大することは間違いない。これら定性データをアグリゲートしデータベース化し、有用な形で提供するデータサービスの最初の試みがTOBYOやDFCであり、これは今後さまざまな形で出現してくるだろう。

ブログ、SNS、ツイッターなどの出現によって、医療の景観も変わってくるはずだ。そこに機敏に反応していくことが、TOBYOやDFCで私たちが目指していることだ。私たちは、従来の医療を、従来の医療のままITを使って反芻するつもりはない。今までに無いものを作り出し、今までにない医療を作りだそうとしている。たとえば、ソーシャルメディアが従来の医療を変革する可能性を信じている。

これまで過去に、なんとたくさんの、そして様々な人々の口から「医療を変える」という言葉が発せられてきたことだろう。だがそれらの大半は、「患者様中心医療」のように虚しいスローガンであるか、「感動と美談」押し売りの情緒反応であるか、あるいは「専門家の権威」にぶら下がるような言説でしかなかった。これらを一万回繰り返しても、医療は何ら変わることはないのだ。だが、現に私たちの目の前にあるソーシャルメディアの可能性とそれが産出するデータを使って、私たちは新しいシステムと新しいサービスを具体的に作り出すことができる。そして具体的に医療を変えることができるのだ。美しくも長大なスローガンではなく、すぐに実践できて役立つイノベーション。これが重要なのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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