墨東奇譚

先週、妊婦が複数の病院で受け入れを断られ死亡するという痛ましい事件があった。一旦は搬送を断り、結局受け入れた地域の総合周産期母子医療センターである都立墨東病院に対する舛添厚労相の批判と、それに対する石原都知事の反論などもあり、国と自治体の責任の押し付け合いという様相さえ見られた。

数年前に起きた奈良の同様の事件以来、この間、一切何も改善されず、ある意味で起こるべくして起きた悲劇と言えよう。この原因が深刻な産婦人科医の不足にあることは今さら言うまでもない。 続きを読む

GoogleとDossiaがContinuaに加盟

大規模PHRの主導権をめぐる熾烈な競争が、Google Health、マイクロソフトのHealth Vault、IntelなどDossiaコンソーシアムの三者で繰り広げられているが、21日、GoogleとDossiaコンソーシアムがContinua Health Allianceに加盟することが発表された。Continua は、家庭医療機器、遠隔医療システムからPHRまで、パーソナルヘルス分野の情報システムの総合的な相互接続を推進する企業連合体である。

ContinuaのPRビデオを見ると、家庭と医療者や健康関連施設をネットワークで結ぶ様々な健康サービスが構想されているのがわかる。これらの新しい健康サービス群の共通インフラとして、個人医療情報を集約するPHRが非常に重要になるはずだが、GoogleやDossiaはそこを睨んだ上でアライアンスに参加したのだろう。 続きを読む

コミュニケーションの問題

comm

国立国語研究所が、難解な医療用語の言い換え例をまとめ発表した。取り上げた57の医療用語を3グループ化し、それぞれ患者にわかりやすい言い方を示している。たとえば「予後」が「病状の見通し」、「浸潤」が「がんの広がり」というぐあいである。

患者の医療参加を進めていく上で、このような「言語の壁」はどんどん崩してもらいたい。特に問題は病名なのではないか。病名は固有名詞だから言い換えはむつかしいだろうが、表記の簡素化はできるはずだ。難解な漢字を並べた病名表記が多く、その読み方さえ分からない場合がある。また、「子宮頚がん」と「子宮頸がん」のように、同じ病名なのに表記が違う例も多く見受けられる。また医療機関や医療者によって病名が微妙に違う場合もある。さらに医療界だけの独特の読み方もある。闘病記を読むと、これらによって患者側に混乱が起きている場面にぶつかることがある。なんとか病名の表記と読み方の統一を、早急に実現してもらいたいものだ。 続きを読む

医療者向け情報ツール市場

20日付けのWall Street Journalで「変化のための処方箋」という医療IT分野の記事が掲載された。書いたのはアリゾナ州立大学のAMAR GUPTA教授だが、今後、情報技術が医療におよぼす変化について優れた洞察を提示している。この記事の冒頭、次のように語られている。「病院やその他の医療機関は長い間、医療機器、処置、治療などにおけるブレークスルー技術は素早く採用してきたが、ネットワークとコミュニケーションにおける技術革新にはきわめて乏しい注意しか払ってこなかった」。 続きを読む

「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」

まったくの偶然であるが、「『患者体験』を映像と音声で伝える:「健康と病いの語り」データベース(DIPEx)の理念と実践」と題するDIPEx関係者による「論文」があることをはじめて知った。(「情報管理」2008,Vol.51 No.5 JST)

この「論文」中に、現在準備が進められている「健康と病いの体験のデータベース」DIPExと対比的にTOBYOのことが言及されている。「『TOBYO』(http://www.tobyo.jp)は、約4,000の闘病ブログが登録されているポータルサイトで,病名のほか,治療法や患者の性別や年齢などの条件でブログを抽出できる検索機能がついている。」(p308)と紹介してくれている。まず、「ポータルサイト」などと一度も言った覚えはないのだが、とにかくどのように誤解する自由もあることは認める。だが「ポータル」など、一体いつの時代のことなのか?
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