医療者向け情報ツール市場

20日付けのWall Street Journalで「変化のための処方箋」という医療IT分野の記事が掲載された。書いたのはアリゾナ州立大学のAMAR GUPTA教授だが、今後、情報技術が医療におよぼす変化について優れた洞察を提示している。この記事の冒頭、次のように語られている。「病院やその他の医療機関は長い間、医療機器、処置、治療などにおけるブレークスルー技術は素早く採用してきたが、ネットワークとコミュニケーションにおける技術革新にはきわめて乏しい注意しか払ってこなかった」。

ここで語られていることは、まさに日本の医療機関を思い起こせばわかる。MRIをはじめ最先端の医療機器の導入は世界一進んでいるが、では病院ウェブサイトの現状はどうかと言えば、貧相な医療情報しか提供されておらず、診療予約システムさえ備えていないところがほとんどだ。

「医療の情報システム」といえば、なぜかEMRをはじめとする、クローズドで大がかりなシステムしかイメージされて来なかったのである。だが、たとえば問題を「患者とコミュニケーションする」というシーンに焦点化してしまえば、普通のウェブツールを組み合わせるだけでもかなりのことが実現できるはずだ。メール、カレンダー、IM、twitter、ビデオやドキュメント共有など、今日、無料で提供されているありふれたツールを活用するところからジェイ・パーキンソン医師は出発し、新しい患者との接触の仕方を開発したことは記憶に新しい。これによって「Doctor2.0」という、まったく新しい医師の活動スタイルが生み出されたのである。

そう考えてみると、大規模EMRやEHRなどとはまったく違った発想で「医療の情報化」ビジョンを作りなおし、これまでにない新しいサービスとして提供できる可能性がある。そんなふうに気づいた人たちが、最近いくつか新しい医療者向けのウェブサービスをローンチし始めている。

たとえば、医療アルファブロガーとして世界的に有名なハンガリーのBertalan Meskoが開発中の新サービス「Webicina」などが注目される。これはWeb2.0ツールの医師向けパッケージとも言うべきものである。何の変哲もないツールのパッケージなのだが、医師の活動に最適化することによって医療業務、特に患者とのコミュニケーションを大きく改善することを目指している。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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