コミュニケーションの問題

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国立国語研究所が、難解な医療用語の言い換え例をまとめ発表した。取り上げた57の医療用語を3グループ化し、それぞれ患者にわかりやすい言い方を示している。たとえば「予後」が「病状の見通し」、「浸潤」が「がんの広がり」というぐあいである。

患者の医療参加を進めていく上で、このような「言語の壁」はどんどん崩してもらいたい。特に問題は病名なのではないか。病名は固有名詞だから言い換えはむつかしいだろうが、表記の簡素化はできるはずだ。難解な漢字を並べた病名表記が多く、その読み方さえ分からない場合がある。また、「子宮頚がん」と「子宮頸がん」のように、同じ病名なのに表記が違う例も多く見受けられる。また医療機関や医療者によって病名が微妙に違う場合もある。さらに医療界だけの独特の読み方もある。闘病記を読むと、これらによって患者側に混乱が起きている場面にぶつかることがある。なんとか病名の表記と読み方の統一を、早急に実現してもらいたいものだ。

TOBYOでは、なるべく病名表記の簡素化を目指しているのだが、これも当方が勝手に決めるわけにはいかない。だが、たとえば難解な漢字病名を読解可能にするために、TOBYOでは病名上にポインタを置くと読みを「かな」で表示するような工夫もしている。

昨日エントリで、患者とのコミュニケーションを活性化する2.0ツールについて触れたが、考えてみるとこのようなツールやシステム以前に、医療用語や病名が患者と共有されていなければコミュニケーションは成立しない。そして、事はなにも医療者と患者の間のコミュニケーション問題にとどまらない。医療者間の間で用語や病名が共有されていない場合さえあるからだ。

数年前、ある大規模医療機関チェーンに対し、患者向けの医療用語Wikiサイトを提案したことがあった。その医療機関が擁する1500人の医師が、それぞれの専門知識を少しづつ出し合えば、たちどころに最新の医療百科事典が出来上がる。こちらの説明を聞き終わった幹部は次のように述べた。「なるほど、良いアイデアだ。しかし、実はウチの医師間で用語や病名が統一されていないという問題がある。患者向けではなく、内部の医師向けの用語統一事典みたいなものができればありがたいのだが・・・・・」。これには絶句してしまった。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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