「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」

まったくの偶然であるが、「『患者体験』を映像と音声で伝える:「健康と病いの語り」データベース(DIPEx)の理念と実践」と題するDIPEx関係者による「論文」があることをはじめて知った。(「情報管理」2008,Vol.51 No.5 JST)

この「論文」中に、現在準備が進められている「健康と病いの体験のデータベース」DIPExと対比的にTOBYOのことが言及されている。「『TOBYO』(http://www.tobyo.jp)は、約4,000の闘病ブログが登録されているポータルサイトで,病名のほか,治療法や患者の性別や年齢などの条件でブログを抽出できる検索機能がついている。」(p308)と紹介してくれている。まず、「ポータルサイト」などと一度も言った覚えはないのだが、とにかくどのように誤解する自由もあることは認める。だが「ポータル」など、一体いつの時代のことなのか?
TOBYOをはじめ、最近、ネット上に登場してきた医療関連の2.0系サイトやソーシャルメディアに対し、どうやらこの「論文」はDIPExの「違い」を明確化することをめざして書かれたようである。だが、ご心配なく。「違い」は長大な論文を書くまでもなく、誰の目にもはっきりしている。そして、そんなことをわざわざ論じるのも、時間の無駄というものだ。

結局、UGC(User Generated Contents)をどう評価するか、につきるということだ。以前のエントリで、「今後、YouTubeなどに患者体験ビデオが多数アップされるだろう」と書いた覚えもあるが、YouTubeのようなソーシャルメディアが患者体験映像の主要なメディアになることは間違いない(すでに多数の患者体験ビデオがアップされている)。そしてそこでは、一言で要約すればDisintermediation(中間項排除)が起きる。中間項として排除されるのは「専門家」による「編集」である。

YouTubeだけではない。すでに自分のブログで手術体験映像を発表したり、闘病記をポッドキャスティングしている患者も存在する。要するに、これら爆発的に展開している2.0的な事態をどう見るかである。そしてこの「論文」がどのような立場からUGCをはじめ「インターネット上の『患者体験』」を見て、自分たちを区別しているかは明らかだ。

今や、UGCを共有するためには「専門家」も「編集」も不要になってしまったのだ。「中間項」はコストに過ぎないからだ。少なくとも、それを補助金(税金)で賄うべきではないだろう。もう、そんな時代ではないのだ。

Does anybody really know what time it is?
(Robert Lamm)

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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