英国Dipexサイト「healthtalkonline」

ご報告が遅れたが、5月8日付け毎日新聞「関心高まる闘病記:下 先輩患者の知恵、ネットに」にTOBYOが紹介された。実はこのブログで紹介するかどうか、少し迷った。というのは、また例によって「Dipex Japan」という団体の紹介がメインで、記事の半分強を占め、TOBYOやライフパレットは「刺身のつま」みたいな扱いでお茶を濁されていたからだ。まだ実際に何のサービスも開始していないにもかかわらず、なぜだか毎日新聞はじめマスメディアはこの団体にご執心である。

だが、以前から疑問だったのは、オックスフォード大学から始まったとされるこのDipexが、Health2.0など海外の新しい医療シーンでは、まったく話題にも上がっていない点だ。私は2005年くらいから、海外の新しい医療ITの動向をウォッチしてきたつもりだが、この「Dipex」関連のトピックスやニュースに触れたことは一度もなかったのである。だが、当方の見落としということも当然あるだろう。というわけで「Dipex」の本家本元の英国サイト「healthtalkonline.org」を調べてみた。 続きを読む

「闘病記」を越えて(2): 「分解-再編-総合」

「リアル闘病本」としてパッケージ化された「闘病記」と、現在ウェブ上に多数活動中の闘病サイトは、一見似ているようでまるで別モノである。その「違い」にこだわろうとするのか、それともその「違い」を無視しようとするのか。当然、どちらを取るかによって、闘病体験に関わるサービスの方向性はまるで違ったものになる。それを極論すれば、その違いを無視し、あえて従来の「闘病記」の延長線上で発想しようとするなら、何もウェブを使ってサービスを開発する必要はないはずだ。従来の出版サービスや図書館のようなもので十分だ。

つまり、リアルのアナロジーとして闘病サイトを見ている限り、基本的にどのような新しいユーザー価値も作ることはできない。同様にこのことは、患者体験のビデオパッケージにも言える。従来のビデオパッケージを単にウェブサイトで配信するだけなら、それは古くて懐かしい「オンデマンドVRS」と変わるところはない。だがこれは、今日のYouTubeなどとはまったく別モノと考えなければならないだろう。コミュニティについても同様である。従来のリアル「患者会」のようなものをウェブ上にあえて作る必要はないし、むしろ「患者会」の延長線上にウェブコミュニティを考えてはならないのだ。要するに「リアルをウェブ上に再現する」という誘惑を断固として退けなければ、どのような新しい医療サービスも作ることはできないのだ。 続きを読む

「闘病記」を越えて(1)

このブログでウェブ上の闘病記のことをあれこれ考察しているうちに、皮肉なことだが「闘病記」という呼称自体に対する当方の違和感は、だんだん大きくなってきている。だが、「闘病記」に代わる適切な呼称とて見つからず、他者にわかりやすく説明する必要もあって、依然としてこの呼称を用いなければならないのが実はもどかしい。

当方のその違和感を探ってみると、「リアル本の闘病記がまずあり、ウェブ闘病記はその代替物みたいなもの」などとリアル本の優越を主張するような、そんな従来の「研究者」たちの言説に対する反発みたいなところにたどり着くと思われる。昨年、「闘病記研究会」なるものに異論をぶつけたのも、実はそのような「反発」があってのことだった。
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問題解決型コミュニティへと進化する患者SNS

23andMe

先週、PatientsLikeMeのALS患者コミュニティ向け「遺伝子検索エンジン」とALS克服プロジェクトについて紹介したが、今度はGoogle系列の遺伝子解析サービス会社23andMeが、パーキンソン病の患者コミュニティを軸とする大規模プロジェクトを発表した。

23andMeは、パーキンソン病の代表的研究機関「The Parkinson’s Institute and Clinical Center」および俳優マイケル・J・フォックスが主催する財団法人「The Michael J. Fox Foundation」の協力を得て、全世界から1万人規模のパーキンソン患者コミュニティを立ちあげる予定。すでに2000人のパーキンソン病患者の参加が決定しているそうだが、患者コミュニティと遺伝子解析技術をベースとする難病克服プロジェクトという点で、先のPatientsLikeMeのALSプロジェクトと同様の発想に基づくと言えるだろう。 続きを読む

闘病ユニバースの現状と将来

TOBYO収録の闘病サイトは今月中に1万5千サイトに達する。ウェブ上の闘病ユニバースに存在する闘病サイトの数をおよそ3万程度ではないかと推測してきたが、これでそのほぼ半分近くまで可視化することができたわけである。だが、この「3万」という数はあくまでも推測値であり、可視化作業を続けている当方の感触から言えば、もう少し小さいかもしれない。

では年間にどのくらいの闘病サイトが誕生してきているのだろうか。TOBYO収録の闘病サイトを設立年ごとに見ると、2000年以降では次のような状況になっている。(09年4月13日現在)

  • 2008       (3,218)
  • 2007       (3,125)
  • 2006       (2,844)
  • 2005       (2,363)
  • 2004         ( 750)
  • 2003         ( 365)
  • 2002         ( 275)
  • 2001         ( 229)
  • 2000         ( 216)

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