問題解決型コミュニティへと進化する患者SNS

23andMe

先週、PatientsLikeMeのALS患者コミュニティ向け「遺伝子検索エンジン」とALS克服プロジェクトについて紹介したが、今度はGoogle系列の遺伝子解析サービス会社23andMeが、パーキンソン病の患者コミュニティを軸とする大規模プロジェクトを発表した。

23andMeは、パーキンソン病の代表的研究機関「The Parkinson’s Institute and Clinical Center」および俳優マイケル・J・フォックスが主催する財団法人「The Michael J. Fox Foundation」の協力を得て、全世界から1万人規模のパーキンソン患者コミュニティを立ちあげる予定。すでに2000人のパーキンソン病患者の参加が決定しているそうだが、患者コミュニティと遺伝子解析技術をベースとする難病克服プロジェクトという点で、先のPatientsLikeMeのALSプロジェクトと同様の発想に基づくと言えるだろう。

と言うか、これはまったくPatientsLikeMeのコンセプトを模倣したものと考えられる。23andMeの公式ブログサイト「spittoon」を見ると、「このような多数の調査研究参加者を集めるには、従来の調査手法だと一年とまではいかないまでも、ふつう数ヵ月は要した。23andMeはウェブの力と個々人の熱意を活用することによって、劇的に従来の調査研究のペースを変えることができる」などと述べているのだが、これなど、これまでPatientsLikeMeが何度も主張してきたことそのままである。

だが、このようなプロジェクトの模倣は大歓迎だ。これによって、これまで遅々として開発が進まなかった難病克服が大幅にスピードアップされるからだ。これまで難病の新治療方法や新薬などの開発は、主として企業の研究開発部門や大学など研究機関が担ってきたのだが、今後はこれらのプロジェクトのように、ウェブの患者コミュニティをベースとし、そこに遺伝子解析など先端技術を組み合わせるような、まったく新しいスタイルのプロジェクトが多数出てくることが予感される。

患者SNSは汎用SNSとは違い、難病克服など「問題解決型コミュニティ」へと進化することが可能なのだ。そのことに最初に気づいたのがPatientsLikeMeなのだが、ここが決定的な差別化のポイントであり、患者SNSの持つアドバンテージだと思う。単なる「人的交流」を超え、コミュニティパワーと「患者の叡智」を活用し、特定の医療問題解決を志向するようなサービスまで打ち出すことができれば、製薬メーカー、研究機関など、多くのプレイヤーとのビジネスコラボレーションの道が大きく開けるはずだ。そして何よりも、直接、患者と社会に寄与することができるのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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