TOBYO収録の闘病サイトは今月中に1万5千サイトに達する。ウェブ上の闘病ユニバースに存在する闘病サイトの数をおよそ3万程度ではないかと推測してきたが、これでそのほぼ半分近くまで可視化することができたわけである。だが、この「3万」という数はあくまでも推測値であり、可視化作業を続けている当方の感触から言えば、もう少し小さいかもしれない。
では年間にどのくらいの闘病サイトが誕生してきているのだろうか。TOBYO収録の闘病サイトを設立年ごとに見ると、2000年以降では次のような状況になっている。(09年4月13日現在)
- 2008 (3,218)
- 2007 (3,125)
- 2006 (2,844)
- 2005 (2,363)
- 2004 ( 750)
- 2003 ( 365)
- 2002 ( 275)
- 2001 ( 229)
- 2000 ( 216)
2005年に闘病サイトが著しく増大していることがわかるが、これはおそらく、ブログの普及ががこのころ一気に進んだためと思われる。ただ2007年、2008年と、その伸長はやや鈍化してきているといえるかも知れない。闘病ユニバースといえども孤立して存在しているのではなく、それはブロゴスフィア全体の消長動向に影響されているはずである。その意味で、日本のブロゴスフィアの現状が気になる。
また個々の闘病サイトを見ていると、もともと「ブログを書いてみたい 」という出発点から書き出され、たまたまその途中で病気に直面したため闘病体験ドキュメントが追加されるようなケースと、最初から「闘病体験を書き、誰かにこの体験を伝えたい」という強い目的から開始されるケースの、大きく分けて二つのケースがあると思われる。これら二つのケースの比率だが、病気によってかなり違うようだ。これはあくまで仮説だが、一般的に病気ごとの「生活に占める病気シェア」とでも表現される指標があり、この大小によってそのサイトの性格は変わってくると考えられる。「病気シェア」とは生活全体の中で、その病気がどの程度の心理的時間的占有を強いるかという指標であり、常識的に見て重篤な病気ほどそのシェアは大きいはずだ。
手前味噌ながら、これらの傾向を概観し分析的に検討できるところまで、TOBYOは成長してきたと言えるだろうが、では、今後の闘病ユニバースはどのようになって行くのか。上述したように、これは当然、まずブロゴスフィアやウェブ全体の進化に影響されるだろう。そして次に、にもかかわらず高い「病気シェア」を持つ病気については、やはり闘病体験は書き継がれていくのだろうと当方は推測している。つまりブロゴスフィアなど全体の動向にかかわりなく、一定の数の闘病サイトは必ず出現してくるだろう。その際、その受け皿となるサービスが非常に重要になるだろう。
三宅 啓 INITIATIVE INC.