PatientsLikeMeがALS患者の「遺伝子検索エンジン」をリリース

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米国で、最もユニークで、最も成功している患者SNSと言われるPatientsLikeMeだが、今月、そのフラッグシップコミュニティである難病ALS(筋萎縮側索硬化症)コミュニティの設立三周年を記念し、新たに「遺伝子検索エンジン」サービスの開始が発表された。これはALS患者が、遺伝子レベルで「自分と似た患者」を探すことができるようなサービスであるとのこと。また、同コミュニティ患者の遺伝子情報を共有することにより、ALSの原因と結果の解明をはじめ、新しいALS治療法の開発などに活かすことができるとしている。

Google資本の23andMeをはじめ、一昨年あたりから消費者向け遺伝子解析サービスが多数立ち上がってきたが、いよいよこの流れが患者SNSと合流し始めたわけだ。23andMeもコミュニティを形成しようとしているのだが、PatientsLikeMeの場合、データ共有の目的が、たとえば「ALSの新治療法開発」などと非常に明確になっているだけに、説得力あるユーザーメリットを打ち出せるのではないか。このあたり、PatientsLikeMeの巧みなターゲット戦略には学ぶべきものが多い。 続きを読む

PHR:医療現場での利用イメージ


(Microsoft Surface Demo for Patient Consultation (Interface by Infusion)

先日エントリでHealthVaultの家庭における利用イメージビデオを紹介したが、なぜかYouTubeから削除されてしまったようだ。その代わりと言っては何だが、PHRのもう一つの重要な利用シーンである医療現場における利用イメージを、やはりHealthVaultの紹介ビデオで見ておこう。

HealthVaultの医療現場での利用のために、マイクロソフトは「MS Surface」というアプリケーションを開発しているようだ。このビデオは医療現場で、この「Surface」を介して、医療者と患者がどのようにPHRの情報を利用できるかを紹介している。注目されるのはデスク上に平面設置されたディスプレイである。通常の縦置きディスプレイでは、医療者と患者の視線は平行で交わることがない。だがこのような平面設置ディスプレイなら、常に相手の視線を捉えながら、双方のコミュニケーションが可能となる。また、IDカードを画面上において読み取れるなど、操作性も良さそうだ。このSuefaceは、すでにテキサス州の医療機関”Texas Health Resources”で稼働しているとのことである。
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経済危機による精神疾患リスク

SAMHSA

4月1日ワシントンポストによれば、米国政府のHHS(保健社会福祉省)は、今回の未曾有の経済危機プレッシャーによる米国社会の精神疾患増大に備え、ウェブで市民へ警告と情報提供を始めた。これはHHSのSAMSHA(薬物乱用・精神衛生管理庁)が運営するサイトに設けられたコーナーで、経済危機によってもたらされるリスクの警告、ストレス管理の方法、支援リソース、自殺徴候などについて市民に注意を促すものである。HHSがこのような精神疾患増大に対する警告キャンペーンをおこなうのは過去二回あり、一回目は2001年の同時多発テロ事件直後、二回目は2005年のハリケーン「カトリーナ」直後で、今回が三回目となる。 続きを読む

「サイト認証」という時代錯誤

医療関連ウェブサイトの国際認証団体であるHON(Health On the Net Foundation)が、その認証基本ガイドラインである「HONコード」の修正を計画している。HONはジュネーブに本部を置く国連の外郭団体で、最も権威のある医療サイト認証団体とされており、その認証シールは海外著名医療サイトはもちろん、医療ブログなどにも多数の掲出実績がある。

今回のHONコード見直しは、現在世界的に医療関連サイトにも浸透しつつあるWeb2.0サービスへの対応が主たる目的とされている。具体的には従来のHONコード8原則を土台とし、それぞれの原則をWeb2.0の動向に合わせ細かく修正している。この修正HONコード案はHONサイト上で公開されており、それに対するアンケートページも設けられている。

思い返せばインターネット初期、HONやURACをはじめいくつかの認証団体が立ち上がったが、結局、それらのうちで残ったのはHONコードだけと言ってよいだろう。それは他の認証ルールが煩雑を極めたのに対し、HONコードが「8原則」だけで一番シンプルだったからだと思う。日本でも「JIMA」とか「JACHI」などという団体が「サイト認証」に取り組んだが、まったく普及しなかった。 続きを読む

闘病体験をどう見るか

一般に「闘病記」を語るときに、「勇気をもらえる」とか「元気が出る」などの表現が用いられることが多い。だが、これは本当にそうなのだろうか。何か歯の浮く過剰な美辞麗句に過ぎないような気もする。このブログでは、闘病者生成コンテンツのことを様々に考えてきたが、われわれ健康者の一方的な思い入れに基づき、勝手に「勇気をもらえる」などと言い立てるのとはまったく違う見方で、おそらく闘病者たちはこれらの闘病体験ドキュメントを見ているのではないか。ある種の反省とともに、正直なところ常にそんな気がしていたのである。

最近、ある前立腺がんの闘病者ブログを読んでいると、次のように記されているのを目にした。

昨日の朝日新聞beの記事にもTOBYO,ライフパレット、オンライフなどのサイトに闘病情報が得られるとあり誘惑にかられて早速画面を出したが表紙を見た時点で詳しく中を見るのは怖くなってすぐ閉じた
辛い苦しい悲観的な情報をみつけたら気の小さい私は当然落ち込む
夜などついつい考え込んでは調べてみたい誘惑にかられるが
朝になるとその気は失せる
それを知ったからといって病状が変わる訳ではないだろうから
家族が気を使って慰めにいい情報だけを伝えてくれるのは有難い
落ち込んだところでいいことはないがそれでも最悪の結果を覚悟し容認しようと努めている、今後の展開にそなえて心の準備が必要だ
この先、治療方法がはっきりしたら情報検索するかもしれない
段階的に気持ちは変わるのだろうと思う
情報社会で情報を避けるのもおかしなものだ

        「前立腺がん闘病記-4 」(「一言孤児」

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