様々なる闘病記

このブログでは、これまで闘病サイトの現状やその傾向について何回か報告してきている。最近、あちこちウォッチングして感じるのは、まともな闘病サイトへ行きつくこと自体がだんだん困難になって来ているということである。ネット上にノイズが大量に発生しており、闘病サイトが見つけにくくなっているのだ。

その闘病サイトを取り巻くノイズだが、まず偽装闘病サイトあるいは「名ばかり闘病記」が増加している。「○○闘病記」などタイトルを見ただけでは、そのサイトが偽装サイトかどうかは判別しにくく、サイトへ行ってみて初めて偽装サイトであることが分かるケースが多い。こんな徒労を下手をすると何回も繰り返すことになり、貴重な時間を無駄に費消してしまう。これら偽装サイトは、闘病体験が一切記録されていない「名ばかりサイト」であったり、一見もっともらしい体験記に見えながらもあきらかに作話であったり、特定の健康食品や健康法へ誘導するものであったりする。特に「もっともらしい闘病体験」の体裁を偽装しているケースでは、ますますその偽装は巧妙を極め、かなり読み込んでみなければ判断がつかないものも多い。 続きを読む

横断的な知の結集

残暑厳しき折、一人の若者が当方を訪問してくれた。医療変革にかける彼の大きな志に接し、清涼な風に吹かれるような清々しい時間を持つことができた。まず、このことに感謝をしたい。Health2.0、PHRと意見交換したが、あらためて日本におけるこれらの可能性を問われてみると、まだ自分なりに決着のついていない問題も多いことに気づかされ、はたして充分に返答できたかどうか定かではない。

たとえばPHRであるが、いくつかの試行はあるものの、まだ日本では本格的なPHRは出現していない。その原因を説明するために、日本医療の現状からネガティブファクターをもっともらしく列挙するのは容易だろうが、それを言ってみたとことで現実的なソリューションを提起することにはならない。とどのつまり、リスク負担を覚悟する確信犯的なプレイヤーがまだ登場していないということではないのか。「確信犯的なプレイヤー」さえ舞台に上がれば、局面を打開するシナリオはなんとでも作案でき、それなりに舞台はブリコラージュとアドリブで進行するのだろう。 続きを読む

「完全無欠システム」から「ブリコラージュ」へ

先日、リチャード・マクマナスの「Read Write Web」に「PracticeFusion」の話題が取り上げられていた。当ブログでも昨春エントリで紹介してあるが、PracticeFusion社はGoogleの広告システムAdSenseをウェブベースのEMR(電子カルテシステム)に配信することによって、無料で診療所にEMRを提供するサービスを開始している。米国では、標準的な診療所に電子カルテシステムを導入しようとすると、約2万ドルかかるといわれている。これは経営規模の小さい診療所にとっては大きな負担であり、「医療IT化」が進まないのも導入コストが高すぎるせいだと指摘されてきた。

だが実はPractiseFusion社以外にも、RemedyMD社をはじめ無料のEMRあるいはEHRを提供するシステムベンダは存在する。大規模医療機関などにも対応できるオープンソースのEHRとしてはOpenVistARPMSが有名だ。このように今後の医療IT化は、PracticeFusion社のようなウェブベースの無料システムやOpenVistAのようなオープンソース利用がどんどん進むとみられている。システムの導入と運用にかかわるコストは医療コストに直結するものであるから、これを低く抑えることは国民医療費の削減にも寄与するはずだ。 続きを読む

暑中雑感

暑中お見舞い申し上げます。

あまりの暑さに、久しぶりに休暇をとって身体を休めた。わざわざ外出する元気も出ないので、自宅で読書、音楽、酒。音楽はジャズ、サンバ・カンソンからラヴェルまで手当たり次第聞きまくり、しっかりエネルギーを充填した。

先月、高校時代の親友を肺がんで亡くした。また、親戚から従妹が摂食障害との連絡があり、早急に良い治療機関を探さなければならない。このところ、近しい者の死や病に直面する機会が増えている。そのたびに、TOBYOがまだカバーできていないサービス領域の存在を、まるで指弾されているかのような気分になる。はたして遠くへ旅立った親友は、TOBYOを利用してくれていただろうか?。 続きを読む

医療IT化は民間主導で

昨日のエントリでリテールクリニックと遠隔医療を取り上げたが、今日の日経朝刊に「遠隔医療 対象を拡大」との記事が一面に掲載されている。これは、総務省と厚労省が共同開催している「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」の中間報告に基づく記事であるようだ。ざっと目を通したが、さしたる目新しい情報も見いだせなかった。ついでに総務省のサイトを見たが、この「懇談会」のメンバーを見ると、そこにかの悪名高き「住基ネット」の仕掛け人とされ、またこのような官庁主催「検討会」の「常連」である某教授の名前を見て、「やはり」と苦笑させられた。

「医療のIT化」というと、これまで官庁が医療者、学者、ITゼネコンなどを集め、検討会や懇談会で政策指針のたたきを作って来たのであるが、そろそろこのようなやりかたをやめるべき時期に来ているのではないか。最近、米国の状況を見ていると、「医療IT化は政府主導ではなく、民間主導で行くべきだ」との主張が徐々に増えてきている。ブッシュ政権のNHIN構想が目標年次を達成できないのは、すでに周知化しつつあるが、これも政府機関の非効率で実行遅延型の実施体制が問題視されつつある。 続きを読む