日本のHealth2.0シーン

新宿御苑でやっとミンミン蝉が元気に鳴き始めた。今年は蝉の鳴き始めが遅いような気がする。ともあれ盛夏到来である。思えば二月にTOBYOアルファ版を公開してから、早くも半年が経過しようとしている。立ち止まってゆっくり考える間もなく、春先から突っ走って来たわけだが、まだ当分はこのまま進むしかない。やらなければならないことは山積しているが、とりあえず現時点で当方が考えていることをいくつかメモっておこう。

まず、「日本のHealth2.0」ということで言えば、TOBYOをはじめ春先からいくつかスタートアップ企業がサイトデビューを果たし、従来にない動きが日本の医療情報サービス分野にもたらされたと言えるだろう。だが、それらはまだ少数にとどまる。それに、まさかわれわれがこのブログなどで、UGCやUGMとしてのウェブ闘病記の意義を主張してきたせいでもあるまいが、奇しくもこれらスタートアップは多かれ少なかれ「ウェブ闘病記」に焦点を合わせている。つまりプレイヤーが少数でありながら、特定テーマへの収斂が起きているわけで、これはあまり健全な状態とは言えないだろう。 続きを読む

医療ビデオ共有サービスは出現するか


Johnson & Johnson社は、先日、YouTubeにヘルスチャンネル「JNJhealth」を開設した。ここに置かれたビデオは、ブランド訴求や製品説明などプロモーションを目的とするものではなく、もっと消費者に身近で一般的な健康問題を取り上げ、健康に暮らすための問題提起をしている。ビデオにはJ&Jの製品はおろかブランドすら一切露出されない。また著作権さえ放棄しているかのように見える。 続きを読む

500エントリ

一昨年の年末から書き始めた当ブログは、今日めでたく500回目のエントリをポストするに至った。思えばこの一年半の間に、従来にない新しい波が世界の医療シーンに押し寄せてくる様を、幸いにもわれわれはリアルタイムで目撃してきたのではなかったか。その意味ではこのブログは「幸運なブログ」だったと思う。

当初はこのブログのタイトルが示すように、われわれの新規事業「TOBYO」を開発する上で必要な情報をメモする程度の考えでスタートしたのだが、同時に伝わってきたアメリカのHealth2.0の盛り上がりに刺激を受け、「世界の医療変革ムーブメント全体の見取り図をつくろう」などと大それたことまで考えるにいたった。だが、そのようなマクロな透視図を作る作業は、結果として、われわれの「TOBYO」を客観的に評価し位置づける上でも必要なことであった。

また、世界の動向を見ることによって、日本の医療を相対化する視点を獲得することができたと思う。従来からの「連続体」として、あるいは所与の動かぬ環境として日本の医療を見るのではなく、Health2.0というまったく新しい視点から「日本医療」を批判的に検討することができたと思う。そしてその上で、TOBYOが果たすべき役割も次第に明らかになったのである。

また振り返ってみると、2005年あたりを境として、当方の情報収集方法は著しく劇的に変わった。それ以前は新聞やニュースサイト中心の情報収集であったのが、2005年以降はブログ中心の情報収集に変わったのである。さらにブログを始めてからは、海外のブログを毎日大量に読み、その中で重要な出来事をピックアップし、それを素材として自分の考えをエントリにまとめる。このように「ブログを読み、考え、ブログを書く」というサイクルを日課とし、「情報を集めながら情報を配信する」というスタイルを継続することになったのである。これによって、確かに自分の中で「何か」が大きく変わったような気がする。

この世界には、実際にやってみなければわからないことは多い。その中でも、ブログは最たるものかもしれない。日本ではHealth2.0もPHRもまだほとんど知られていないが、これらに関心を持つ人なら、とにかくまず自分のブログを立ち上げよう。「プディングの味は、食ってみればわかる」。海外のHealth2.0シーンを見ても、そのメインの活動ステージはブログである。日本でHealth2.0をテーマとするブログが多数登場することを期待したい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

新しい患者像と患者SNSをめぐって

ときどき「患者SNSはどうあるべきか?。またそのフィージビリティは?」という議論をすることがあるのだが、米国の状況を見ていると、PatientLikeMeのような特化型患者SNSが成功しているのに対し、いわゆる一般的な汎用患者SNSはさほど成果を挙げていないようである。この点をどう読むかが、患者SNS開発の一番重要なポイントであるだろう。

患者SNSに対するユーザーニーズは、どうやら「似た者同士の交流」というような、誰もがすぐに思いつくものとは、まったく違うものとして考えなければならないのではないだろうか。「心の安らぎ」とか「慰安、癒し」などをシェアする場としてではなく、先日、ニューヨークタイムズがPatientLikeMeの紹介記事にいみじくも付けたヘッドライン「Practicing Patients」が示すように、「アクティブに病気を克服する実践的な活動の場としての患者SNS」という新しいイメージを持つことが、いまや必要になっていると思うのだ。 続きを読む

パーソナル医療情報検索

 TOBYO_Search

TOBYOでは、闘病記だけを検索対象とするバーティカル検索機能「TOBYO事典」を提供している。これは現在、「がん、良性腫瘍」分野を対象として様々にテストをしているが、近く全病名へと検索対象を拡大する予定だ。このようなバーティカル検索機能は日本語「闘病ネットワーク圏」を隅々まで可視化し、必要な体験情報に迅速に到達するためになくてはならないものだ。

ところで闘病者が医療情報を収集する場合を考えると、これら闘病体験情報に加えて、やはり専門的な最新の医学情報も必要となるだろう。そしてこれも闘病体験情報と同じように、Googleなど汎用検索エンジンを使うと、健康食品の売り込み情報など大量のノイズの中から、信頼のおける情報を見つけ出すのが大変だ。そう考えると、ここでもまた検索対象を限定したバーティカル検索機能が必要になるのかも知れない。 続きを読む