米国医師SNSの現状

Sermo_top_page

米国マンハッタンリサーチ社が医師と情報技術に関する調査レポートを発表したが、その中で医師SNSの現状に触れているのが注目される。

同レポートによれば「医師SNSに参加しているか興味を持つ」と答えた医師は60%であり、後の40%は「興味がない」としている。また、既に医師SNSに参加している医師プロフィールの傾向として、同レポートは次のように報告している。

  • プライマリケアの医師
  • 女性
  • PDAか携帯電話を所有
  • 診療中あるいは診療の合間にオンライン接続
  • 医師平均年齢よりもやや若い層

以上の中で、「女性」が医師SNSの中心メンバーであるとの結果に特に注目が集まっている。これは従来まったく知られていなかっただけに、その原因について、さまざまな仮説が出されているようだ。 続きを読む

PracticeFusion社の衝撃

先日、NTTPCコミュニケーションズが医療情報サービス企業と組み、診療所向けにEMR(電子カルテ)システムをSaaS(Software as a Service)で提供するとの記事を読んだ。全国約9万件の診療所は、病院のような大規模なEMRを必要としないので、SaaSベースのEMRシステム提供は今後増えるだろう。しかしこの記事を読んで思い出したのは、PracticeFusion社の無料EMRシステムのことである。

米国では最近、改めて「Disruptive Innovation」(破壊的イノベーション)を実現したと同社を評価する声が高まっているが、たしかにPracticeFusionが医療IT市場に与えたインパクトは大きい。何といっても「無料」のEMRである。以前のエントリでも取り上げたことがあるが、従来、既存ベンダが提供する診療所向けEMR価格(初期投資)はおよそ2万ドル。さらにメンテナンスやアップグレードの費用が加算され、医師個人にとって負担は大きく、結局、導入コストがEMR普及の足を引っ張る要因であった。 続きを読む

闘病ネットワーク圏のインフラツールとしてのTOBYO

winter_tree

TOBYOの収録闘病サイトが今日で12,000を超えた。以前、ウェブ上の闘病ネットワーク圏の規模をおおよそ3万サイトと推計したことがある。これが正しいとすると現時点で全体の約40%を可視化したことになるが、ここまで来ると、更にもっと可視化を進め闘病ネットワーク圏の全体像をとらえることができればと思う。一つでも多くの闘病サイトを紹介したいのだ。

TOBYOが目指してきたものは非常にシンプルである。まず、ネット上のどこにどんな闘病サイトがあり、どんな情報があるかを可視化することであり、次に、それら闘病サイトの情報を縦横無尽に検索できるようにすることであった。たとえば、GoogleやYahooなどの検索ツールがネット全体のインフラツールになっているように、TOBYOは「闘病ネットワーク圏のインフラツール」になることを目指している。 続きを読む

医療情報源としてのインターネット

che

日曜日(1月18日)は映画「チェ28歳の革命」を観るために、朝から妻と新宿へ出向いた。この映画、淡々と進行する抑制の利いたドキュメントタッチの作り方が気に入った。チェ・ゲバラは言わずと知れた「世界革命の時代」のイコンであるが、たしかに今の時点で彼とその時代を映像化するとすれば、このような撮り方しかないはずだ。彼を取り巻くドラマチックな「伝説」をではなく、日常を積み上げた「事実」を淡々と語るしかない。「世界革命」という物語が終わってしまったのだから。 続きを読む

医療情報の流動性とベンチャー

tower

寒い日が続く。乾燥し大気が澄んでいるせいか、富士がやけにくっきりと、手が届くような近さに見える。

さて昨日のエントリ「医療情報の流動性」だが、考えてみれば当方のTOBYOにしても、患者をはじめ闘病者の体験情報の流動性を高めフローを促進するためのツールと言えなくもない。従来、闘病体験は患者とその家族や知人周辺でしか共有されていなかった。闘病体験情報は特定の個人とその周辺に貼りついて固定化されていた。それがネットワークに配信されるようになると、それら情報は流動性を獲得し、個人を越えてフローし、社会全体で共有される可能性を持った。つまり個人的な体験がネットによって社会化されたのである。別の言い方をすれば、個人的な体験がパブリックな価値を持つようになったのだ。そしてTOBYOは、この社会化された闘病情報の流動性とそのパブリック価値をさらに高め、より多くの人に活用されるためのツールをめざしている。

あるいは医療提供側の医療情報フローが現状では十分でないために、患者体験のフローを通じて医療の可視化をはかるプロジェクトであるとも言える。本来なら昨日のレポートにもあるように、「患者と医療機関の間の医療情報フローとコミュニケーションの強化」をはかるべきなのだろうが、圧倒的に医療機関側が情報コントロール権を握っている日本の現状ではむつかしい。 続きを読む