一日だけの闘病

今朝起きると頭が割れるように重く、身体はコントロールを失いふらつくありさま。体温をはかると38.1度であった。ひたすら安静にして熱が下がるのを待ったが、体温はその後も上昇し38.7度に達した。39度になったら医者へ行こうと考えたが、「ひょっとして新型インフルエンザか?」という懸念も頭をもたげてきたのである。「闘病記を書かないとなあ」などと考えもした。だが昼頃に発汗があり、熱は下がり始めた。さっき(15時)はかってみると37.5度。山は越えたようだ。新型インフルエンザではなく、ただの風邪だったようだ。 続きを読む

日本のHealth2.0経済圏の創造へ向けて

昨日、ある大学医学部の先生からメールを頂戴した。見ると、TOBYOプロジェクトが事業としてどのように持続していくのかについて、率直な感想や質問が書かれていた。たとえばTOBYOに広告バナーが貼られていないのは清々しいが、一体、売上はどうなっているのかなど、まことにごもっともなご質問である。実はこのような質問は、これまで様々な方々からしばしば頂戴している。中には、真剣に深く心配までして下さる方もおられ、恐縮の至りである。

TOBYOのビジネスモデルについて、このブログでは何度か考え方や方向性は述べてきたのだが、具体的なディテールまで説明したことはなかった。構想はいくつもあり検討も進めてはきたのだが、いかんせん「いまだ機は熟さず」という思いが先に立ち、計画を立案し行動するまでには至らなかった。ではいつになったら「機が熟す」のかと言えば、収録闘病サイト数が1万5千サイトを超え、バーティカル検索エンジンで全文検索できるサイトが1万サイト以上になった時だと決めていた。そしてようやく最近になって、これらの条件はクリアされたのである。すなわち機は熟した。いよいよビジネスモデル構築へ向け本格的に動き出す時だが、それに関連して次のようなことを考えている。 続きを読む

TOBYOプロジェクト:年内の予定

前回エントリでも少し触れたように、TOBYOプロジェクトの次のビジョンについても考えているが、一方では当面取り組まなければならないタスクが山積み状態である。次のような目標を念頭に置いて、全体の進行イメージを描いている。

2009年末時点のTOBYOプロジェクト到達目標

  1. 収録闘病サイト: 2万サイト
  2. 収録病名数: 900件
  3. 検索対象サイト: 約1万5千サイト
  4. 検索対象ページ総数: 約300万ページ

今年の年末には、TOBYOは以上のような規模になっているはずである。ウェブ上の闘病サイト総数はおよそ3万と推定されるが、年内には少なくともその3分の2を可視化し、2分の1を全文検索できるようにしたい。しかし収録サイト数など規模が大きくなるにつれ、個々の闘病サイトや闘病体験に関する情報のファインダビリティ(見つかりやすさ)は低下するので、これらの対策も考えている。新しいコーナーを設置することになるだろう。 続きを読む

闘病情報の標準化について

ずいぶん時間はかかったが、TOBYOプロジェクトは闘病ユニバースのうち約1万6千件の闘病サイトを可視化し、「1万人が書いた闘病記の全文検索」を実現するところまで来た。もちろん今後も、引き続き闘病ユニバースの可視化件数を増やし、検索精度の向上に努めていかなければならないのだが、実は次のステップについてもビジョンづくりを進めている。

まだボンヤリしたイメージに過ぎないし、言葉としても練れていないのだが、次に私たちが取り組むのはおそらく「闘病情報の標準化」というテーマになると思われる。現在、TOBYOプロジェクトが取り組んでいるのは、ウェブ上に分散する不定型な闘病体験情報を分類整理し検索可能にすることだ。このことによってはじめて、自発的に形成された闘病ユニバースにすでに存在する膨大な量の体験情報が、誰にでも簡単に活用できるようになる。だが、これら闘病体験情報は不定形であるがゆえに、相互に比較しにくく、統計処理もしにくいような定性的データである。つまり「個別闘病者の個別体験」という自己完結性を強く持ち、それらを横断的に比較参照して「何かについての評価をおこなう」ようなデータではない。この際の「評価」とは、まず端的に言って「医療機関評価」ということになるだろうが、さらに「医療者、治療法、薬剤、医療費の評価」へと展開されるだろう。 続きを読む

書評:「がんと闘った科学者の記録」(戸塚洋二著、立花隆編、文藝春秋)

Totsuka_Youji

先日エントリでも紹介したが、ノーベル物理賞受賞を確実視されながら大腸がんで亡くなった戸塚洋二氏の闘病ブログが本になった。「がんと闘った科学者の記録」(戸塚洋二著、立花隆編、文藝春秋)。本書は戸塚氏ブログサイトに書かれた闘病記を中心に、戸塚氏と交流があった立花隆氏による長尺の「序文」、そして「文藝春秋」(2008年8月号)に掲載された両氏による対談「がん宣言『余命19カ月の記録』」を収録している。立花氏の「序文」では、氏が戸塚氏に送ったメールが紹介されており、次のような箇所に目がとまった。

医者とのコミュニケーションがいまひとつのご様子心配しています。ただ実際問題として、がんはまだまだわからないことが多すぎて、医者としても質問に答えたくても答えようがないというのがおそらく実情だと思います。そう言う意味からも、患者のブログを沢山集めてデータベース化するというアイデア、大賛成です。

わからないものにぶつかったときは、まずは大量のファクトの集積からはじめるべきで、それも無機的な統計データ的ファクトの集積ではなく、人間という最高の知的センサーの集合体を最大限に利用したファクトの膨大な集積をはかるべきです。

そうでないと個々の医師が持つ貧しい体験知の集積を持ってよしとする(そういう貧しい体験知しか持たない医師が権威とされ、そういう貧しい権威の集まりがガン対策の戦略を決めるのが正しいとされる)袋小路的状況下から抜けられないと思います。(「序文」) 続きを読む