データ・ルネッサンス

Big_Data2

スティーブ・ジョブズ逝く。享年56歳。その偉大なチャレンジ精神に敬意を表し、ご冥福を祈りたい。

この春からMacBook Airを使いはじめたが、たしかにこのユーザー・エクスペリエンスは、Windowsマシンで得られることはないものだ。そう言えば、昔、AppleⅡ j-Plusを大枚はたいて買って以来だから、実はもう30年近いAppleユーザーであるとも言えるのだが、その間、長期にわたってDOS→Windowsがメインになっていた。AppleⅡはまだ押入れにしまったままで、「そのうち定年になって時間ができたら、いろいろいじって遊んでみよう」などと考えていた。しかし、その「定年」近い年齢になって、まさか「ベンチャー」をやっていようとは思ってもいなかった。

さてdimensionsはやっとありがたくも成約段階まで来たが、その後いくつか改善点が判明し、現在そのための最終チューニングに取り組んでいる。また昨年来、このブログであれこれdimensionsの価値や意義というものを思考実験してきたが、最近考えているのは前回エントリでも触れた「ビッグ・データ」との関係である。

たしかに、TOBYOからdimensionsへ続く私たちのプロジェクトは、ビッグ・データをめぐる今日の「データ・ルネッサンス」と交差していくことになるだろう。日々、おびただしい量の患者体験ドキュメントが生み出されネットに公開されているが、このような人間が作る医療データだけではなく、今後は各種センサーやガジェット類など、機械が医療データを量産し、ネット上に大量に自動送出することになるだろう。この両方の医療ビッグ・データをアグリゲートし構造化するサービスが求められるわけだが、もちろん私たちのdimensionsはその一翼を担うものであると考えている。

続きを読む

「ビッグ・データ」の胎動

Big_Data

今週サンフランシスコで開催されたHealth2.0カンファレンスで、「ビッグ・データ」という言葉に注目が集まったらしい。そう言えば、この春頃からこの言葉はあちこちで目につき、気になっていたのだが、どうやらその出所はマッキンゼー・グローバル・インスティチュートが5月に発表したレポート“Big data:The next frontier for innovation,competition,and productivity”であるようだ。 このレポートでは特に医療におけるビッグ・データの価値について言及しており、米国医療における潜在的な価値は年間3000億ドル、医療支出削減効果は年間8%としている。

今回のHealth2.0カンファレンスでは、主催者のインドゥー・スバイヤ氏がビッグ・データについて特に発言し次のように述べている。

“This year at Health 2.0 I think we’re beginning to see technologies really for the first time doing that intelligent mining, archiving, presenting and visualizing of this information,” (Health2.0 News “Experts Weigh In on Big Data Tools”)

続きを読む

Patients 2.0

Patients2.0

先週は台風のため大阪で立ち往生した。帰りの新幹線が全面ストップとなり、やむなく大阪で一泊することになった。それでもかつての後輩と、久しぶりに楽しくビールを飲みながら語り合えてよかった。中之島界隈は高層ビルが立ち並び、すっかり景観が変わってしまい驚いた。

さて、昨日からサンフランシスコではHealth2.0カンファレンスが開幕している。今年は新たにPatients2.0というムーブメントが立ち上げられたようだ。これはサンディエゴの春季カンファレンスでキックオフされたムーブメントで、「ブランディング・ワークグループ、データ・ワークグループ、ペイシェンツ・ニーズ・ワークグループ」の三つのワークグループから成っている。Health2.0ではおなじみのジェーン・サラソーン=カーンがまとめ役をしているようだ。

なかなかユニークなムーブメントで、従来の患者会等とはだいぶイメージが異なるようだが、今更言うまでもなく、本来Health2.0の主役にして中心に位置するのは患者であるべきはずだ。しかしどちらかと言えば、これまでのカンファレンスでは患者は単独の主役としては登場していなかった。それがようやく「主役」として登場しようとしている。これはHealth2.0ムーブメントにとって大きな出来事だ。Patients2.0ムーブメントの今後に注目したい。

日本でも来月、第三回目となる”Health2.0 Tokyo Chapter”が開催される。昨夏、六本木ヒルズで開かれて以来、久しぶりの開催となる。その後、どんな新しいスタートアップ企業が登場しているか楽しみである。またこれは当方の勝手な希望だが、可能であれば何らかの形で「主役」の患者が登場して欲しいと思う。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

糸瓜忌

子規庵

今日は正岡子規の「糸瓜忌」である。1902年(明治35年)9月19日、享年34で子規は死去した。辞世の句とされるのは以下の句である。

糸瓜咲て痰のつまりし仏かな

痰一斗糸瓜の水も間にあはず

をとゝひのへちまの水も取らざりき

たまたま昨日、妻と墓参のついでに根岸の子規庵へ寄ってみた。座敷と続き間の書斎からのぞむささやかな庭には、糸瓜、鶏頭、芙蓉をはじめ多数の草花が植えられ、四季を通じ見飽きることはないと思われた。そして子規はこの庵で結核療養の日々を過ごし、闘病記「病牀六尺」「仰臥漫録」を書いた。日本近代文学に闘病記という新しいジャンルを切り拓いた作品と言われている。

子規没後110年経って、多くの闘病ドキュメントがウェブ上に公開され、闘病ユニバースという膨大なデータ空間を形成するに至っている。これはおそらく日本だけの現象だと思われるが、その原点に子規の優れた闘病記録があったことが大きかったのではないかと、ひそかに考えることがある。

TOBYOもdimensionsも、正岡子規の闘病生活の端正なセンチメント抜きの写生がなかったら存在しなかっただろう。偉大な才能に感謝。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

Across The Universe


もう9月。早いなあ。あっという間に夏が立ち去って行った。今年ももう三分の二が過ぎた。暑い夏だったが、TOBYOプロジェクトは着実に前進した。dimensionsは7月にサービスインしたものの、その後、マシン・リソースを見なおし、マシン構成を組み替えてきたが、システム全体がスムーズに稼働するまでにかなり時間を要した。特にディスティラーがかなり計算パワーを費消することがわかったが、あえて「こちら側」に計算マシンを配置することで乗り切った。24時間マシン稼働体制なので、夜間の排熱には気を使った。暑い夏の夜が一層熱くなったわけで、秋風が吹きはじめてほっとしている。

またこの夏、dimensionsのプレゼンを何回かやったが、そのたびにスライドを修正することになった。それは主として闘病ユニバースの扱いをめぐってであり、TOBYOプロジェクトの原点とも言うべきこの闘病ユニバースの重要性は、いくら強調しても強調しすぎることはない。TOBYOプロジェクトが他の医療情報サービスと異なるのは、この闘病ユニバースというまさにネット的な存在に立脚しているところだと思う。 続きを読む