「ビッグ・データ」の胎動

Big_Data

今週サンフランシスコで開催されたHealth2.0カンファレンスで、「ビッグ・データ」という言葉に注目が集まったらしい。そう言えば、この春頃からこの言葉はあちこちで目につき、気になっていたのだが、どうやらその出所はマッキンゼー・グローバル・インスティチュートが5月に発表したレポート“Big data:The next frontier for innovation,competition,and productivity”であるようだ。 このレポートでは特に医療におけるビッグ・データの価値について言及しており、米国医療における潜在的な価値は年間3000億ドル、医療支出削減効果は年間8%としている。

今回のHealth2.0カンファレンスでは、主催者のインドゥー・スバイヤ氏がビッグ・データについて特に発言し次のように述べている。

“This year at Health 2.0 I think we’re beginning to see technologies really for the first time doing that intelligent mining, archiving, presenting and visualizing of this information,” (Health2.0 News “Experts Weigh In on Big Data Tools”)


しかし、昨年カンファレンス冒頭においてもスバイヤ氏は同様の発言をしていた。ビッグ・データとは、UGCをはじめウェブ上に公開され増え続ける膨大なデータのことを指すが、たしかにこれらの有効活用はまだ始まったばかりだ。当方のTOBYOとdimensionsも、ビッグ・データ有効活用の一端を担うものだと言えるだろう。そしてこれは従来の「調査」とは明らかに違うものだ。

最近、当方のdimensionsに対するさまざまな人々の反応の中で当方が困惑するのは、従来の「調査」の枠組みでdimensionsを理解しようとするような反応である。従来調査手法がどんどん陳腐化している現状を見ないふりをしているのか、あるいは見たくないのか、とにかくいかに人間というものが「従来のやりかたを変えたくない」存在であるかを痛感することしばしばである。

「スティーブ・ジョブズはマーケット・リサーチをしない。アップルのマーケット・リサーチは、彼の右脳で発想されて左脳で実行されるのだ」 - ガイ・カワサキ

たまたま昨日から読み始めた「イノベーションとは何か」(池田信夫、東洋経済新報社) の冒頭には上のような言葉が付されていたが、そのとおりで、マーケット・リサーチからイノベーションは生まれないのである。(ちなみにこの本は、非常に刺激的でしかも実践的な示唆に富む良書である。)

さて、従来の「調査」に還元されるのではない、ビッグ・データの新たな活用開発がフロンティアだと言われているのだが、当方dimensionsもまだ「ビッグ・データ」という量的規模には至っていないものの、まさに同じ方向へ向けた試行プロジェクトだと考えている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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