ハイパーリンクからソーシャルグラフへ

ここ一週間ばかりの間に、FacebookがGoogleを抜いて次世代ウェブの覇者になるのではないかとのニュースや論評(「Facebookはついに次世代ウェブの主導権を握ったのではないか?」TechCrunch  )が立て続けに米国から届いた。現在Facebookは急拡大しており、すでに会員ユーザー数月間ユニークユーザー数は5億人に迫ろうという勢い。そして先週発表されたソーシャル・プラグインなどオープン化施策によって、Googleに代わりウェブ・インフラの地位を奪取する戦略が明確になってきた。たしかにFacebookは最大のソーシャルグラフ保有者であり、この点でGoogleに対し優位に立っている。

今回発表されたソーシャル・プラグインによって、外部のサードパーティーはFacebookのデータを使い簡単に新しいサービスを生み出すことができるようになる。たとえば、Facebook内の闘病体験データをアグリゲートし、病院や医師のレーティング・サービスが生まれる可能性がある。またFacebookが新たに導入したLikeボタンによって、ウェブ上の医療情報、医療サイト、さらにリアルの医療機関に至るまで、簡単にクチコミ評価情報を集めて提供することも可能になる。従来のハイパーリンクに基づく検索サービスよりも、より的確な情報をソーシャルグラフをベースとしたサービスは提供できるだろう。 続きを読む

TOBYOプロジェクト、DFC-Distillerの新展開

既にツイッターではお知らせしたが、来月中旬頃にTOBYOのトップページ・レイアウト変更を考えている。いささか窮屈になってきたのでワイド化に取り組むのだが、現状デザインのルック&フィールは変更しない。まだまだTOBYOはブランド浸透を図らなければならない段階にあり、視覚アイデンティティを継続してブランド・パーセプション構築に努めなければならない。

今回のワイド化によって告知、ウィジェット、広告など新しいコーナーを設置することになる。特に広告枠をはじめプロモーション・スペースが確保できるので、今後、さまざまなご要望にお応えできるだろう。各方面からどしどしリクエストを頂戴したい。

さて、TOBYOプロジェクトのB2B事業であるDFC-Distillerだが、ようやく徐々に仕様が固まってきている。今月中に仕様最終決定の上、来月から開発に入りたい。ブランド・ネーミング、ロゴ、マークなどシンボル系制作も開始するが、「distiller:ディスティラー」(蒸留器)というワードは何らかの形で使いたい。 続きを読む

試行錯誤と前進

昨日今日と、ようやく春らしい日和になった。春風に誘われて、昼休みは久しぶりにお弁当を持って新宿御苑へ。芽吹きはじめた新緑を見ながら散策するのは楽しい。

ところで年初の寒い時期から、TOBYOプロジェクトはDFC(Direct to Consumer)の商品化に取り組んできた。二月末までに基本構想は出来上がったので、いくつか試行をやってみてフル稼働へ入るつもりだった。ところがその後、商品のあり方をめぐってかなり根本的な変更(コンテンツ→ツール)をめざすことになった。この過程で初期構想はかなり拡散してしまい、焦点が今ひとつ不明確になり、もう一度シンプルな全体像を取り戻すために、拡散した一連のアイデアの整理&収束を図る必要が出てきていることに気づいた。

そんなこんなで、ニーズ、技術、商品形態の三点から見直しを図っている。どうやらいつのまにかある種の過度のこだわりによって、ある時点から構想の全体像を見失ったような気がする。先週ミーティングでそのことに気づき、早速修正に着手している。いずれにせよ、来月から本格的な開発に着手する。できればなるたけ早く、夏頃からテスト運用を開始したい。 続きを読む

衰退する米国医療テクノロジーと日本の高齢化産業界

昨年から、米国医療IT業界とくにITゼネコンの停滞についてさまざまな指摘がされはじめている。その原因として、たとえば医療IT分野の規制やシステム認証制度などが従来より強化されてきたからだと言われているが、はたしてそうだろうか。一方、医療IT分野だけでなく、製薬、医療機器の分野においても停滞は見られ、総じて米国の医療テクノロジー全般が衰退しはじめているのではないかとの議論が出てきた。

Harvard Business Reviewの4月12日付ブログで、“Has the U.S. Health Technology Sector Run Out of Gas?”と題するエントリがポストされた。製薬、医療機器、医療IT分野の危機的状況がレビューされているが、その原因を次の三点で解説している

  1. リスク回避のマネジメント・スタイル
  2. 規模は実際にはハンディキャップになっている
  3. グローバル人材競争に負けている

これを見ていると、何か日本経済のことを指摘されているような気がした。はたして、日本の大企業で「ゲーム・チェンジング」なリスクを取ろうというところはあるだろうか。規模がでかくなるほど官僚体質は強化され生産性は低下する。また、かつては世界の先頭集団に属しながらも、いつのまにか下位集団に転落しはじめると、世界から優秀な人材を集めることはできなくなる。 続きを読む

Health2.0ヨーロッパのオープニング・ビデオ


4月6日、7日パリで開催されたHealth2.0ヨーロッパ・コンファレンス。そのオープニングビデオが公開された。「ヨーロッパでは政府がHealth2.0の重要な役割を果たしている」とのタイトルが付されているが、そう言えばヨーロッパの医療制度は日本に似ている。その意味でこのコンファレンスでどのような議論がされたのか興味深いところだ。

しかし「政府がHealth2.0の重要な役割を果たしている」と言われてもイメージが湧くはずもない。政府と2.0は対立概念としてなら理解できるが、「2.0を推進する政府」など悪い冗談としか思えない。(Goverment2.0というのもあるが・・・・)。だからこのビデオのタイトルを見た途端、正直言ってあまり良い印象を持てなかった。

そう言えば昔、口を開けば「国のe-Japan戦略は云々」などと吹聴していたインターネット医療関連NPOがあったが、このビデオタイトルを見て、あまり思い出したくもないことを思い出してしまった時のような気分がする。

三宅 啓  INITIATIVE INC.