医療を変える会員制医療提供サービス: Crossover Health


ここ数年、Health2.0ムーブメントをウォッチングしてきたが、今や世界的な広がりを持ち始めたこのムーブメントの中心的理論家は、ファウンダーのマシュー・ホルト氏でもインドゥー・スバイヤ氏でもない。それはスコット・シュリーブ医師である。2006年暮れ、ドミトリー・クルーグリャク氏をはじめとする”Health Train”グループとHealth2.0グループの論争が勃発したが、Health2.0のアウトライン・ロジックを構築し戦略的方向性を提起して論争を征したのがスコット・シュリーブ医師だった。

その後、マシュー・ホルト氏はHealth2.0のコンセプトとして「アンプラットフォーム」を新たに打ち出したが、これはどうも精緻さに欠け、さしたる成果をあげていないように見える。昨年秋、SFカンファレンスで発表されたHealth2.0発展サイクル論も、どうも牽強付会の感が強すぎ、新しいものが何も提起されていないように思えた。

そこで当方など、もっぱらスコット・シュリーブの言動に注目してきたわけだが、昨年来、主だったステージから忽然と姿を消してしまった。だがこの間、スコット・シュリーブはまったく新しい医療提供サービス“Crossover Health”の開発に取り組んでいたのである。

そう言えば、スコット・シュリーブはオープンソースEHR”WorldVista”開発に参画し、またDTC検査サービス“MyMedLab”の起ち上げにも参画していた。卓越した理論家であるばかりでなく、優れた実践家であり起業家でもあるわけだ。 続きを読む

Across The Universe


もう9月。早いなあ。あっという間に夏が立ち去って行った。今年ももう三分の二が過ぎた。暑い夏だったが、TOBYOプロジェクトは着実に前進した。dimensionsは7月にサービスインしたものの、その後、マシン・リソースを見なおし、マシン構成を組み替えてきたが、システム全体がスムーズに稼働するまでにかなり時間を要した。特にディスティラーがかなり計算パワーを費消することがわかったが、あえて「こちら側」に計算マシンを配置することで乗り切った。24時間マシン稼働体制なので、夜間の排熱には気を使った。暑い夏の夜が一層熱くなったわけで、秋風が吹きはじめてほっとしている。

またこの夏、dimensionsのプレゼンを何回かやったが、そのたびにスライドを修正することになった。それは主として闘病ユニバースの扱いをめぐってであり、TOBYOプロジェクトの原点とも言うべきこの闘病ユニバースの重要性は、いくら強調しても強調しすぎることはない。TOBYOプロジェクトが他の医療情報サービスと異なるのは、この闘病ユニバースというまさにネット的な存在に立脚しているところだと思う。 続きを読む

TOBYO事典とX-サーチ

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8月が終わる。一時期涼しかったものの、最近ではまた蒸し暑さが戻ってきた。しかし夜には、あちこちでコオロギが鳴き始めている。

さて、TOBYOで公開している検索エンジン「TOBYO事典」とdimensionsで提供する検索エンジン「X-サーチ」の関係をよく尋ねられることがある。どちらもバーティカル検索エンジンではあるが、実のところ両者はまったく別物で、採用しているプログラム・システム自体が異なっている。

またどちらもTOBYOが可視化したデータを扱ってはいるが、対象としている時期が異なっている。守備範囲が違うのだ。TOBYO事典はあくまでテスト運用ということもあり、一昨年末までのデータを検索対象としており、その後の更新はしていない。対してX-サーチは広く最新データまで対象としている。従って検索対象サイトも、TOBYO事典が約1万4千サイトであるのに対し、X-サーチでは約3万サイトになっている。 続きを読む

自発性、回答者A、不揃いなる事実

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dimensionsで扱うデータは、私たちが闘病ユニバースと呼んできたウェブ上に公開された闘病者のドキュメントである。これらのデータはどのような特徴を持っているのだろうか。患者アンケートやヒアリングなど他の患者ソースのデータと、どこがどのように違うのだろうか。

TOBYOプロジェクトを開始するに当たって、私たちは闘病記というものを改めて考察するところから出発し、ウェブ上の患者ドキュメントの性質をさまざまな角度から見てきた。その過程で、まず従来のリアル闘病記、つまり本としてパッケージ化された闘病記とウェブ上の闘病ドキュメントの差異を考えざるを得なかった。しばしば「われわれはネットから医療を見ている」という言い方をしてきたが、実はこのような考え方は、リアル闘病記とウェブ闘病ドキュメントの差異認識に由来するものである。だがこのことについては、後日、あらためて論じる機会があると思う。

さて、ウェブ闘病ドキュメントと患者アンケートやヒアリングなど患者調査データとの違いであるが、まず一番大きな違いは、なぜそのようなデータが作成されたのかをめぐるデータ生成の動機である。ウェブ闘病ドキュメントはあくまで闘病者自身のため、すなわち純粋に「自分のために書く」ことが動機になっており、それは闘病者自身の内発的な自発性だけに依拠している。対して患者調査では、データ生成動機は闘病者の内部には存在せず、リサーチャーやモデレータなど外部の第三者が闘病者とは無関係に作成した調査目的に依存している。
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アラカン・ベンチャー

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明日は誕生日。今夜は前夜祭。うーむ。しかし歳を食ったものだ。「アラカン最後の誕生日」と来たもんだ。これでベンチャーをやっているんだから、感謝。これまで、「エッ!あなたが三宅さん?!」と言われたこともしばしば。「本当にあなたが、あのTOBYO開発ブログを書いている人なんですか?」と何回言われたか・・・・(笑)。よっぽど若いヤツが書いているように見えるらしい。

2008年2月にアルファ版をローンチしたTOBYOだが、収録闘病サイト3万件まであとわずか。そして、一昨年暮れから開発を進めてきたdimensionsがやっと完成した。当方の誕生日とあわせ、幸いにもいろんなことが良いタイミングでそろった。

そしてこれまで「闘病体験傾聴ツール」と言ってきたdimensionsだが、これからは「患者体験傾聴システム」との表現にしたい。もうすでにディスティラーとX-サーチという二つのツールがあるわけだが、今後、これらのツールは増やしていく。「患者体験傾聴ツールの集合体」という意味で「システム」という言葉を使おうと考えている。

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