e-Patientsと参加型医療

The Quantified Patient from e-Patient Dave deBronkart on Vimeo.

昨年のHealth2.0ムーブメントで特筆すべきことは、ベンチャー企業、IT企業、医療界など従来プレイヤーの他に、新たにe-Patientsと呼ばれる消費者・患者グループが参画してきたことだろう。旧来の患者会やアドボカシーなどとは違い、ウェブを積極的に活用して患者参加型医療の実現をめざす新しいタイプの医療消費者群が登場したわけだ。

この中心的存在が、これまで当ブログでもたびたび紹介してきた”e-Patient Dave”率いる”e-Patients.net”であり、昨年、このグループが中心になり「参加型医療学会」が結成され、このほど学術誌「Journal of Participatory Medicine」が創刊された。彼らがHealth2.0ムーブメントに参画してくることによって、Health2.0は新たに「参加型医療」という次世代医療のビジョンを獲得したのだと思う。 続きを読む

ウェブ医療サービスの事業成立与件

health2.0

今年2010年は、2008年2月アルファ版からスタートしたTOBYOにとって、いよいよ挑戦の年となる。過去1年10ヶ月の間に、TOBYOは闘病ユニバースに存在する830疾患、1万8600サイトを可視化し、そのうち1万4000サイトが検索可能となった。闘病ユニバース全体はおよそ3万サイトと推定されるから、既にその60%が可視化されたわけだ。

このようにTOBYOプロジェクトの基本条件は整備され、ようやく次のステップに進むわけだが、昨年末に公開したTOBYO事業スキームをもう一度整理し直してみると次のようになる。 続きを読む

ネット時代の医療マーケティング

Manifesto

TOBYOマーケティング・レイヤーの着想にたどり着く過程で念頭にあったのは、昨日のエントリでも触れたが、「20世紀マーケティング復古」とは異なる新しいマーケティングの構想であるが、同時に思い出したのはデビッド・ワインバーガーらの“The Cluetrain Manifesto”のことだ。

ネット時代の新しいマーケティング像を宣言したこの”The Cluetrain Manifesto”は、Health2.0ムーブメントにも大きな影響を与えている。Health2.0に先駆けて2006年秋、米国西海岸で発表された“Health Train : Open Healthcare Manifesto”は、まさに”The Cluetrain Manifesto”の医療版と言えるだろう。 続きを読む

TOBYOプロジェクトの現状と将来

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昨年2月、TOBYOアルファー版を公開したとき、いろんな人から感想や質問をいただいたが、それらは概ね次のようなものだった。

「闘病記の単なるリンク集か?」、「ブログランキングみたいなもの?」

これら私たちに向けられた当時の感想や疑問は皆、ごもっともなものであった。だがごもっともなゆえに、いちいち反論するつもりもなく、私たちは闘病ユニバースを可視化するために、ひたすらメタデータを付けながらネット上の闘病体験データを分類整理していった。闘病ユニバースのコアデータを十分に集めることによって、ようやくTOBYOは次の段階へ進むことができるからだ。いずれにせよ、TOBYOプロジェクトの最下層にあるのはデータ・レイヤーである。 続きを読む

闘病サイトとライフログ

Shinjukuk_West

先週の続きになるが、「闘病記」という括りから、闘病サイトで展開されている闘病者の一連の活動を分けて考える必要がある。従来そこがどうも一緒くたにされてしまい、「闘病記の亜流」みたいな形で闘病サイト上のコンテンツが扱われてきたことが、結局、今ネット上で起きている闘病者の新しい情報活動を見えにくくしているのだ。リアル闘病本の延長線上で闘病サイトを見てしまうから、医療に対するインターネットの可能性と闘病者の活動を過小評価してしまうのだ。

インターネット黎明期から出現しはじめた闘病サイトは、同時に誕生した病院など医療機関サイトや製薬企業サイトよりも、いわゆる「ネット的な性格」を強く持っていた。病院サイトなどがトラディショナル・メディアの発想つまりワンウェイ思考で作られていたのに対し、闘病サイトは自分の医療体験をライフログとして記録し、不特定の「誰か」との共有を想定して公開されたのである。そこには、最初からインタラクティブなコミュニケーションが前提されていたのである。 続きを読む