開発中「がん闘病CHART」のフィルタリング機能

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現在、クチコミ検索エンジン「がん闘病CHART」デモ版を開発中(上図:サイト数等ダミー)。まだデザインなどはラフなイメージ段階だが、ネット上に公開されたがん闘病サイトのうち「乳がん、胃がん、肺がん、大腸がん」について、「検査・診断、治療法、薬、病院、闘病生活」の各ジャンルで、患者が最も話題にしているクチコミ・キイワードをランキング・チャート形式で可視化する。

チャートインしているキイワードをクリックすれば、バーティカル検索エンジンの検索結果が表示される。さらに、検索結果をそれぞれのジャンルに応じた絞りこみ項目でフィルタリングすることができる。このフィルタリング項目の設定が、このサービスの肝になると考えている。

たとえば薬CHARTでは「副作用、費用、処方」のフィルタリング分野を用意している。「副作用」分野を見ると「吐き気、嘔吐、アレルギー反応、発熱、食欲不振、倦怠感、下痢、便秘、腹痛、脱毛、口内炎、白血球減少、手足のしびれ、皮膚や爪の黒ずみ、貧血、関節痛」など、かなり細かくフィルタリング項目を設定している。検索結果画面には各フィルタリング項目ごとのヒット件数も表示される。一口に「副作用」といっても、実際の患者体験に基づくクチコミをここまで細部まで可視化するのは、おそらくはじめての試みではないかと思う。 続きを読む

TDR:TOBYO Document Research

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ようやく新宿にも春がきた。新宿御苑は梅が満開だが、ところどころ桜も咲き始めた。今なら、梅と桜を一挙両方観る贅沢が味わえる。昼休みにお弁当を持って行こう。

さて現在、先のエントリでも触れたように「がん闘病CHART」の開発を進めているが、実は同時に昨年来やり残していた仕事に再度取り組んでいる。dimensions開発の過程でカスタム・ソリューション・サービスを構想していたが、そのまま放置してしまっていたのだ。

dimensionsは、TOBYOプロジェクトで可視化した闘病ユニバースのデータをさまざまな観点から見ることができる汎用ツールである。ユーザーの目的に応じて、ユーザーがいろいろな使い方ができるように作ってあるのだが、「ツールよりも、結論をまとめたレポートが欲しい」という声もあちこちで耳にした。

また「ソーシャル・リスニング」ということ自体がまだ一般の企業には馴染みがなく、困惑する向きも少なくなかった。「リスニング」の基本文献であるステファン・ラパポートの”Listen First”だが、電通ソーシャルメディアラボが翻訳し、やっと来月4月12日に出ることになった。とにかくこういう基本テキストが出てくれなければ、なかなか社会的認知も進まないのであるが、だからと言って、これでただちに認知や理解が一挙に進むわけでもない。 続きを読む

事業領域の再考をめぐって

shinjuku_gyoen_lunch前回エントリで触れたが、現在、dimensionsで開発した技術をB2Cモデルへ転用した「乳がん闘病クチコミCHART」(仮)の実用化に取り組んでいる。できれば4月から運用を始めたい。考えて見れば、dimensionsは企画立案からシステム運用までほぼ2年かかったわけだが、ここで開発した技術は単にdimensionsというシステムにとどまるものではなく、さまざまな応用領域へ展開できるものである。

当初はあまりそんなことを考える余裕もなく、ひたすらdimensions(旧名dfc)の設計概要を固め機能を実装することで手一杯だった。それでも予定を大幅に超える時間を要したのは、このような未踏プロジェクトを進める以上、ある意味やむを得ないことだと思っていた。そして出来上がってみると、dimensionsという「ソーシャル・リスニング・ツール」が完成したというよりは、それ以上の大きな価値が実現できたのだとの感を次第に強く持つに至っている。

私たちが、dimensions開発の過程で取り組んだ技術は要約してしまうと以下の三点である。

  1. データ取得(クロール、本文抽出、日付取得、DB化)
  2. リスティング(キイワード抽出、集計、カテゴリーリスト化)
  3. バーティカル検索エンジン(新規エンジン採用、疾患ごとのバーティカル検索、メタデータによるフィルタリング)

いずれもきわめて基本的なものであるが、データ精度や処理速度を実用レベルに持ってくるのに随分苦労した。だがこれらの技術によって、私たちは闘病ユニバース上にある膨大な闘病ドキュメントをデータとして自由自在にハンドリングできるようになった。ここが非常に重要なポイントだ。dimensions自体も、これらの技術の組み合わせのうちの「一つのフォーム」ということにすぎない。つまり、これらの技術の組み合わせ方によって、闘病ユニバースからさまざまなアウトプットを取り出すことが可能になったのである。 続きを読む

厳寒に酷暑を想う (原点回帰と路線修正への序章)

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今が一年で一番寒い時期だろうか。この寒い毎日に、半年前に記録的な酷暑があったことを思い出すことは難しい。だが私たちはあの8月の暑い日々の最中に、実はある一つのアイデアを作っていた。しかしそれは、その後、実現へ向け着手されることもなく放置されていた。そして半年たって、偶然にもそのことを思い出す時が来たのである。

今月初めに「天啓」とも言うべき持病の痛風発作が来て自宅蟄居を余儀なくされたが、これはここ半年ばかりのTOBYOとdimensionsの事業展開について振り返る良い機会となった。なんとなく漠然と、この2月に「転機」のようなものが来るだろうとの予感があったが、まさに痛風をきっかけとして従来の事業戦略を修正することになったのである。そして、たまたま半年前のアイデアを思い出したことも大きい。

昨年夏、酷暑の真っ只中にポストした8月15日付エントリ「新サービス『闘病CHART』: 患者話題ランキングとバーティカル検索の連動」 においてdimensionsの応用編ともいうべき新サービスを素描しておいた。エントリをお読みいただければわかるように、このサービスは闘病者(患者、家族、友人他)をユーザーとして想定している。できればB2Cを目指したいところだが、B2B2Cという形もありうる。一方、dimensionsではB2Bモデルを目指してきたが、これは既にご利用いただいている契約ユーザーもあり、当然このまま継続し、引き続きサービスの改善とサポートに努めたい。

だが、私たちの起業原点は「患者のエンパワーメント」にある。ここへ再び回帰しなければならないとの気持ちが強い。それはHealth2.0にも言えることだ。Health2.0は製薬業界のためにあるのではない。Health2.0は「患者のエンパワーメント」のためのムーブメントである。その原点に戻る必要を最初に意識したのは、昨年秋の「Health2.0 Tokyo Chapter3」に参加して、残念ながら割り切れない空虚な気持ちで会場を後にした時だった。 続きを読む

寝正月的Health2.0

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あけましておめでとうございます。

元旦、初詣から帰って発熱、腹痛、下痢。風邪。二日、三日と自宅蟄居、まさに寝正月状態。布団の中でスマホを見ながら、今年の行方をあれこれ考える。

やはりこの時期、「今年はこうなる!」みたいな予想ものエントリが多い。その中で「ビッグデータ・アナリティク・サービス」という言葉を目にした。これは、サイズは小さいもののdimensionsがめざしている方向だと思った。「ネット上の非構造化データをいかに構造化するか」という話だが、これもTOBYOプロジェクトが最初からめざしてきたことだ。今後、dimensionsが保有するデータを他の医療関連データと繋ぐことで、さらに多面的に医療を可視化するサービスが提供できるはずだ。

「データ中心型スタートアップ」というのが、今年出てきそうだとの話もある。音楽業界の“Next Big Sound”など、ソーシャルメディアからビッグデータをアグリゲートし、B2Bで特定業界に寄与するプロフェッショナルなデータサービス提供事業が出てきている。数年前まで、この分野はブログ・リサーチなど汎用データサービスがほとんどを占めていたが、これから業界特化型サービスが主役になるだろう。医療分野でそれをめざしているのがdimensionsだ。

さてHealth2.0関連を見ると、なんといってもこの正月のビッグニュースは、米国の代表的医師SNSであるSermoのファウンダー(ダニエル・ペールストラント)が”Sermo”を離れ、新たにスタートアップ事業“par80″を発表したことだ。これには驚いた。この”par80″は「医師と患者をダイレクトに結ぶサービス」になるとのことだが、詳細は不明。また今後、どうやらペールストラントは完全にSermoを去るわけでもなさそうだ。 続きを読む