厳寒に酷暑を想う (原点回帰と路線修正への序章)

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今が一年で一番寒い時期だろうか。この寒い毎日に、半年前に記録的な酷暑があったことを思い出すことは難しい。だが私たちはあの8月の暑い日々の最中に、実はある一つのアイデアを作っていた。しかしそれは、その後、実現へ向け着手されることもなく放置されていた。そして半年たって、偶然にもそのことを思い出す時が来たのである。

今月初めに「天啓」とも言うべき持病の痛風発作が来て自宅蟄居を余儀なくされたが、これはここ半年ばかりのTOBYOとdimensionsの事業展開について振り返る良い機会となった。なんとなく漠然と、この2月に「転機」のようなものが来るだろうとの予感があったが、まさに痛風をきっかけとして従来の事業戦略を修正することになったのである。そして、たまたま半年前のアイデアを思い出したことも大きい。

昨年夏、酷暑の真っ只中にポストした8月15日付エントリ「新サービス『闘病CHART』: 患者話題ランキングとバーティカル検索の連動」 においてdimensionsの応用編ともいうべき新サービスを素描しておいた。エントリをお読みいただければわかるように、このサービスは闘病者(患者、家族、友人他)をユーザーとして想定している。できればB2Cを目指したいところだが、B2B2Cという形もありうる。一方、dimensionsではB2Bモデルを目指してきたが、これは既にご利用いただいている契約ユーザーもあり、当然このまま継続し、引き続きサービスの改善とサポートに努めたい。

だが、私たちの起業原点は「患者のエンパワーメント」にある。ここへ再び回帰しなければならないとの気持ちが強い。それはHealth2.0にも言えることだ。Health2.0は製薬業界のためにあるのではない。Health2.0は「患者のエンパワーメント」のためのムーブメントである。その原点に戻る必要を最初に意識したのは、昨年秋の「Health2.0 Tokyo Chapter3」に参加して、残念ながら割り切れない空虚な気持ちで会場を後にした時だった。

どうも特定業界との結びつきを過剰に追求しすぎる傾向が、いろいろな形で現れているような気がする。そして、そのことを強く危惧する。たとえば、ある医療サービス・サイトが特定の製薬会社サイトと「シームレスに連携」するなどというニュースを見ると、関係者の方々には申し訳ないが、いったいその医療サービス・サイトの独立性、自律性、そしてサービスの中立性はどのように担保されるのかという強い疑問を持たざるを得ないのだ。そのサイトは製薬会社サイトの単なる「出先サイト」みたいなポジションになり、会員ユーザーが「いつの間にか知らないうちに他のサイトに連れて行かれていた」という事態さえ起きかねない。特に医療者が参加するようなサイトでは学術的な医学情報サービスが基本であるはずだし、とりわけ「サービスと情報の中立性」に慎重な配慮を払うべきではないのか。

Sermo、PatientLikeMe、PracticeFusion。Health2.0ムーブメント初期において、この三社は成功した企業だと言われていた。その共通点は医療関連データを製薬業界に販売していることだ。だからHealth2.0企業にとって、この三社に共通するビジネスモデルが成功のための条件だと考えられたのである。私たちもまたそのように考えdimensionsを開発してきた。だが今にして思い返すと、あまりにも特定業界に焦点を集中しすぎたのではないかとの反省がある。他サイトの以上のような状況も、自分たち自身を振り返る具体的な契機となったと思う。その意味では、その医療サイトに感謝しなければならない。

TOBYOプロジェクトにおいてdimensionsシステムは完成しており、そのサービスは今後も継続する。だが同時に、今度はその技術的成果を闘病者向けにアレンジし、B2CあるいはB2B2Cというモデルで闘病者に直接役立つサービスをリリースしたい。そのことで特定業界への依存度を下げる。そして当面、「乳がん、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん」のラインナップで「がん闘病クチコミ・ランキング&検索サービス」(仮称)をリリースすることになる。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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