増加し続ける医師SNSの問題点

DrNet

医師SNSは米国のみならず英国でも増加している。Doctors.net.ukは英国最大の医師SNS。「医師による医師のためのサイト」を標榜しているが、デザインがこれではお粗末過ぎる。

これまで医療専門家のSNS動向は、主に米国の動向をこことかここで紹介してきた。最近の新顔SNSでは“MedicSpeak”などが注目される。

昨年からこのような医療者向けSNSが多数登場してきたが、多少の差違はあるとはいえ、主たる提供サービスや機能にさほどの違いはなく、全体として「市場の同質化」が進んでいるように見える。逆に言えば、決定的な差別化ファクターを開発しにくい市場なのかもしれない。各SNSも他との差別化に取り組み始めているが、RelaxDoc では登録会員に対し、医療専門家向け医学情報データベース“DynaMed”の無料アクセス権を提供している。

また、英国のDoctors.net.ukが訴求するように、「医師の登録会員数、144,369人!」など「数の優位性」が差別化ファクターになるのかもしれない。たしかにこのようなコミュニティ・サービスは、クリティカルマスを確保しなければ、実際、何も機能しないのだ。

一方、ビジネスモデルの差別化戦略では“Sermo”が際立っている。”Sermo”は登録会員を厳密に審査しライセンスを持つ医療者以外は排除しているが、医療業界企業や団体にたいしては、オブザーバーとしてコミュニティ内部の発言をウォッチングする権利を販売している。これは、コミュニティ内部で会員の医療専門家が提供し共有する個々のオリジナルな経験やナレッジを、間接的に外部関係者に売っているような形になる。

現在、”Sermo”はこのビジネスモデルによって、月間50万ドルを医療業界企業・団体から売り上げているようだ。これに対しては批判もある。今週CNNは、“Cashing in on doctors’ thinking”(医師の思考から利益を得る)と題する批判記事を掲載している。またHealth2.0ムーブメントの論客で知られるScott Shreeve医師も、”Sermo”のやりかたを、これまたかなり露骨な言葉で批判している。

ただ、これらの批判は革新的ビジネスモデルにつきものであるともいえる。真に新しいものが、無批判かつ無傷で登場することはない。今後の”Sermo”とそのビジネスモデルに注目していきたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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