Googleマップによる医療機関評価の可能性

mapshaws

今週からGoogleマップの機能が強化され、マップ上の施設に直接ユーザーレビューを書き込めるようになった。もちろん全国の医療機関にもマップに直接レビューを書くことができる。Googleマップによる医療機関評価への応用の可能性については、前のエントリーを参照。

この新しく追加されたGoogleマップのレビュー機能を使うには、当該地域で施設検索をおこない、検索結果リストから「詳細」をクリック。「レビューを書く」を選択すれば次のようなレビュー記入欄が表示される。レビューを書くためにはGoogleアカウントを取得してログインしておく必要がある。

gmapsample

レビューはレーティングとコメントから成り、レーティングは「☆一つ:悪い」から「☆五つ:とても良い」までの五段階評価。書かれたレビューは公開され、すべてのユーザーが読むことができる。

「これまでにも、Google マップは、電話帳、ウェブ上のデータに加え、グルメ、旅行、エンタメ系著名サイトが持っている情報やクチコミを収集・整理して、ユーザーの皆さんにお見せしてきましたし、これからもこのような情報提携サイトをどんどん増やしていく予定です。今週開始された機能は、それらに加えて、ユーザーの皆さんの声を直接汲み取れるようにしたものです。」

このように、GoogleはGoogleマップ上にウェブ上のさまざまな情報を集約しようとしている。通常のGoogle検索での検索のみならず、エリアを限定したマップ上にウェブ上の情報をアグリゲートしようとしているわけである。医療機関検索においても、これまでマップからその医療機関に関するウェブ上のさまざまな情報を見ることが出来たが、そこにユーザーレビューが加わり、これで実際にユーザーが受診した体験を共有することが可能となった。

これは従来の医療機関検索サービス提供者などにとっては脅威であるが、どうやらGoogleは当面、先行サービス提供者との共存を志向しているようだ。これは、あくまでも「汎用サービス」という立ち位置に当面とどまることを意味する。ただ、今回のユーザーレビューも含め、Googleは医療機関評価のための情報収集ツールをすでに装備済みである。つまり、それらで集めた情報を基に、特化型情報提供サービスをいつでも開発できる立場にあるということだ。

このユーザーレビューの活用については、今後さまざまな展開が予想されるが、医療機関に関して現段階で二つの方向性がありうるだろう。一つは言うまでもない。ユーザーレビューをアグリゲートし、分類評価のうえ医療機関レーティング・サービスを提供する方向だ。これはこれまでもいくつか試行されてきたが、無理に統計処理をするなどの陥穽を脱し切れなかった。むしろ、定性データをいかにわかりやすく提示し、意味ある評価情報として見せるかということがポイントになる。

いま一つは、医療機関自身がこのユーザーレビュー機能を活用する方向だ。定期的に自分のところの病院あるいは診療所のレビューをチェックするのは基本であるが、来院する患者に対し、自院に対する感想や要望をユーザーレビューに書いてもらう旨、積極的に依頼することもありうるのではないか。現在、「目安箱」のような形での患者意見集約がされているが、この時代に「目安箱」でもなかろう。簡単な満足度調査もユーザーレビューを使って実施できるかもしれない。いずれにせよ、自院に対するフィードバック・チャネルの一つとして活用を図るべきだろう。

医療に対するユーザー評価は、従来は大規模な調査を通じて情報収集することが一般的であった。これには時間もコストも人手もかかった。だが、今回のGoogleマップ・ユーザーレビューや他の海外の患者意見集約サービスなどを見ていると、もっとカジュアルに患者の声に接し、それを迅速に医療現場改善へフィードバックするような新しい情報回路が、どんどん創発的に登場していることを強く感じる。だが、本当にこれらを活用する方法はまだ見えていない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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