TDR:TOBYO Document Research

Gyoen_Bistrot

ようやく新宿にも春がきた。新宿御苑は梅が満開だが、ところどころ桜も咲き始めた。今なら、梅と桜を一挙両方観る贅沢が味わえる。昼休みにお弁当を持って行こう。

さて現在、先のエントリでも触れたように「がん闘病CHART」の開発を進めているが、実は同時に昨年来やり残していた仕事に再度取り組んでいる。dimensions開発の過程でカスタム・ソリューション・サービスを構想していたが、そのまま放置してしまっていたのだ。

dimensionsは、TOBYOプロジェクトで可視化した闘病ユニバースのデータをさまざまな観点から見ることができる汎用ツールである。ユーザーの目的に応じて、ユーザーがいろいろな使い方ができるように作ってあるのだが、「ツールよりも、結論をまとめたレポートが欲しい」という声もあちこちで耳にした。

また「ソーシャル・リスニング」ということ自体がまだ一般の企業には馴染みがなく、困惑する向きも少なくなかった。「リスニング」の基本文献であるステファン・ラパポートの”Listen First”だが、電通ソーシャルメディアラボが翻訳し、やっと来月4月12日に出ることになった。とにかくこういう基本テキストが出てくれなければ、なかなか社会的認知も進まないのであるが、だからと言って、これでただちに認知や理解が一挙に進むわけでもない。

まだまだ「リスニングと言っても、せいぜい仮説抽出ぐらいに使うのが関の山だろう」と考えている人も多い。レガシー調査の呪縛から自由になれず、現在、世界で進行しているリサーチ・イノベーションの意味を理解していない、あるいは理解したくない人も多い。まあ当面は仕方ないことだと思う。それでも今日、マーケティング・リサーチとはまったく別方面から「一般意思2.0」のような考え方も提出されている。ちょうど今が、古い潮流と新しい潮流がせめぎあう局面なのだろう。

一方、従来のブログ・リサーチを単に「リスニング」と言い直しただけのケースも散見され、ますます用語と概念をめぐる混迷は深まっている。そこで当方が構想していたカスタム・ソリューションだが、「リスニング」という言葉をあえて使わず「ドキュメント・リサーチ」と呼ぶことにした。TOBYOが可視化し、さらにdimensionsが集計するのは闘病者ドキュメントであるから、この方が実体そのものをきちんと言い当てている。
サービス・ネームは「TDR(TOBYO Document Research)」とした。

「ドキュメント・リサーチ」だが、これはこれまで調査業界で使われていた「ライブラリー・リサーチ」から連想した言葉である。TOBYOプロジェクトが可視化した3万4千サイト、450万ページのドキュメントを、ユーザーの調査目的に応じて検索・集計・出力しようというサービスだが、「これから調査設計し実査する」というレガシー調査の手順とはちがい、「最初にデータありきで、あとから必要なデータを抜き出せばよい」という発想に立っている。

だが、またこのこと自体が「わかりにくい」と言われるような事態も想定されるので、いくつかの工夫が必要だと考えている。そのポイントはユーザーが質問したいことがらを予め想定し、データ抽出仕様にある種の「標準化」を施すことだ。このことによって、レガシー調査に慣れ親しんだユーザーでも違和感を低減できるはずだ。

ところで先の「がん闘病CHART」と同じように、「TDR」もdimensions開発の「副産物」であると言えよう。私たちの当初の想定とは違い、dimensionsはユーザーの汎用ツールであるばかりか、私たち自身の基幹データ処理システムという役割もはたしてくれることがわかってきた。そして「データ集積とデータ処理システム」の二つが揃えば、そこからいろんな人々に向け、多種多様なサービスを提供することができる。これは「基幹データと基幹システム」をコア資源とする、一種のエッジ・アウト戦略であると言えるかも知れない。そういうわけで、今後も闘病体験データに基づいて、いろんな医療情報サービスにチャレンジしていきたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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