三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

今週、「歴史」が動いた

今週は、とにかく「医療情報の権利宣言」につきる。欧米のブロゴスフィアを見ていると、その後もこの「権利宣言」に言及するエントリが続々とポストされている。近年にないものすごい盛り上がり方であるが、近代医療史上、特筆すべき大事件であると言って過言でないし、また、おそらく今後のHIT(医療情報技術)の方向性を決定づけることになるだろう。

何十年かたった将来、私たちは「あの権利宣言で、医療の全てが変わったのだ」と言うことになるだろう。私たちの子供たちや孫たちが、きっと学校で「権利宣言」の歴史的意義を学ぶことになるはずだ。この「権利宣言」は米国のHealth2.0コミュニティだけのものではなく、全世界の闘病者・消費者のものである。もちろん、日本で新しい医療サービスを開発しようとしている私たちにとっての共有財産でもある。 続きを読む

Health2.0と日本

昨日の続きだが、日本のHealth2.0というものはまだない。私たちのTOBYOをはじめ、いくつかの新しい試行が始まっているとはいえ、それはまだ米国のHealth2.0ムーブメントのようなパワーを持つには至っていない。ついでに言えば、このHealth2.0という言葉自体が、まだまだ一般的に日本で語られることは少ないのである。おそらくこの当方ブログが、Health2.0関係のニュースを日本で一番多く発信しているはずだ。欧米ではレガシーメディアまでがHealth2.0をしばしば取り上げているが、日本では今のところ皆無である。

どうしてこのような「情報格差」が日本と世界の間で生じてしまったのだろうか。これにはさまざまな説明が可能だろうが、前から気になっているのは「2.0の受容性」という問題である。多かれ少なかれ、Health2.0がweb2.0のインパクトを受けて登場してきたのは間違いないと言えるだろうが、そのweb2.0の受容の仕方が日本と欧米では何か違っていたのではないかと思う。日本の場合、web2.0は非常に皮相なレベルの理解として受容され、流行現象として消費され、早々に終わってしまったのではないだろうか。しかも社会全体ではなく、非常に限定的な層にしかweb2.0の持つ意味は受容されなかったと思う。特にアカデミズムをはじめエスタブリッシュメント層には、ほとんどさしたる影響を与えることもなく無視された可能性が高い。「況や医療においてをや」である。 続きを読む

「宣言」とHealth2.0

昨日エントリでご紹介した「医療情報の権利」宣言は、今後、私たちがインターネットと医療を考える際の重要な基本指針となるだろう。またHealth2.0ムーブメントが、このような宣言を生み出すところまで来たことを素直に喜びたい。一昨年から始まった、インターネットと医療をめぐる世界的な新たな動き。PHR、問題解決型患者コミュニティ、消費者参加型医療、医療情報の流動性の確保、シェアする権利、・・・・などなど。これまでは、ばらばらに存在しているように見えたこれらすべてを「宣言」が繋ぎ合わせ、めざすべき「近未来医療」の方向性を提示してくれたような気がする。

アダム・ボスワース氏のエントリ「Declaration of Health Data Rights」は是非お読みいただきたい。非常にわかりやすく「宣言」の背景と必要性がまとめられている。これを読みながら、「このような発想は、絶対に医療界内部から出てこないだろうな」という感想を持った。だがこの考察は、よく考えてみると何も目新しいものではない。フツウの患者や消費者なら、誰でも日常的に思っていることや感じていることを、ただまとめて述べたに過ぎない。 続きを読む

「医療情報の権利」宣言

HealthDataRights

今週月曜日(6月22日)、米国でHealthDataRights.orgのサイトが立ち上げられ、そのトップページに「医療情報の権利宣言」が掲げられた。この「権利宣言」は、個人医療情報について、人々が持つべき次の四つの基本的権利を宣言している。これを読みながら、「Health2.0ムーブメントは、明らかに次のステージに移行した」と思った。この「宣言」は、今後のHIT(医療情報技術)の進路に、きわめて大きな影響を与えることになるだろう。

  • われわれ自身の医療情報に対する権利
  • それぞれの医療情報要素のソースを知る権利
  • われわれ個人の医療情報の完全なコピーを、遅滞なく、最小経費もしくは無料で手に入れる権利。もしも情報が計算可能な形式で存在するなら、その形式で入手できなければならない。
  • われわれが適当と考える他人と医療情報をシェアする権利

サイトの「ブログロール」ページには「HealthDataRights.orgは集合知のパワーを必要としている」と書かれ、権利宣言賛同者の多数のブログが掲出されており、また賛同者のページでは260人の個人賛同者とGoogle、MicroSoftをはじめ賛同企業19社が名を連ねている。 続きを読む

今年後半、TOBYOがフォーカスする二つのポイント

TOBYOプロジェクトが、今年後半へ向け取り組もうとしている活動については、エントリ「TOBYOプロジェクト:年内の予定」で数値目標を中心に紹介済みである。一応、初期構想段階で想定していた基本機能に限ってみれば、現状のTOBYOでほぼ完成しているのだが、まだ完成度が低かったりするものもある。

細かいところを省略してしまえば、およそ今年後半の活動は二点に集約されると考えている。まずバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」の改善だが、これはTOBYOプロジェクトのコアに位置する機能であるだけに重要だ。現在、着手し始めているのは新しいクローラーの開発である。従来クローラーではサイト取得率の限界があり、これを向上させなければならない。そして、現状の検索結果品質をさらに高めるために、本文抽出機能と重複取得回避機能の改善をしていく。 続きを読む