三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

個別化細分化する闘病情報ニーズ

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夏から、闘病体験バーティカル検索エンジン「TOBYO事典」の改善&アップデートに取り組んできたが、先月リリースの予定がまたまた遅れてしまった。もうしばらく時間がかかりそうだ。今回の改善&アップデートでは、検索精度の向上と検索インデックス拡大を目指している。しかし、検索インデックスが増加するにつれ検索結果の量も増えるわけで、これは「目指す情報に最短で到達したい」というユーザーニーズに反することになる。海外のバーティカル検索エンジンでは、検索結果にフィルタリングオプションをつけるなど様々な工夫があるのだが、TOBYO事典も将来はこれらを導入していきたい。

当面の問題は、検索対象が増加すればするほど検索結果のSN比が下がり、ユーザーの求める情報にたどり着きにくくなることだ。たとえば乳がんの闘病者が、乳がん治療抗がん剤の副作用を調べたいと考えているとしよう。現状、「TOBYO事典」ではすべての検索インデックスを対象に検索を行っているから、乳がん以外の双極性障害や1型糖尿病の闘病ドキュメントまでが検索対象に含まれる。乳がん闘病者は、当然、乳がん闘病ドキュメントだけを検索したいはずなのに、現状では他の疾患の闘病ドキュメントにたまたま書かれた乳がん抗がん剤のページまで検索結果に表示されることになる。 続きを読む

医療改革プレゼンテーション

このブログでも何度も使用しているプレゼンテーション・スライド共有サイト「SlideShare 」だが、このたび第三回「世界ベスト・プレゼンテーション・コンテスト」を開催した。世界130カ国から応募された3,750点の中から、グランプリに選ばれたのは「Healthcare Napkins All」という作品。これは米国医療改革をテーマとしたプレゼンテーションである。

ホワイトボードと紙ナプキンにサインペンで手書した図表を撮影するという、なんともシンプルでローテクな手法だが、無駄のない説得力あるプレゼンテーションに仕上がっている。この作者Dan Roam氏は「紙ナプキン・ライター」として有名であるらしく、「ナプキンの裏:図表による問題解決とアイデア売り込み」と題したベストセラー本まで出している。またMicrosoft、WalMart、米国上院議会等の指導者に、複雑な問題を「視覚思考」で解決する指南役をしているとのこと。 続きを読む

参加型医学(Participatory Medicine)

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昨年あたりから「参加型医学」(Participatory Medicine)という言葉が散見されるようになったが、今年になって米国で参加型医学協会が設立され、来月10月21日からオンライン・ジャーナル「Journal of Participatory Medicine」が刊行される。これはオープンソースの「Open Journal Systems」で編集された電子ジャーナルで、「医学文化をもっと参加型のものに変える」ことをミッションとして、かなり学術的な観点から「患者の医療参加」を研究発表する場として機能するようだ。

この参加型医学協会の母体となったのは「e-Patients.net」 http://e-patients.net/ だが、この団体は以前からそのユニークな活動で知られており、最近はHealth2.0コミュニティとも連携しはじめている。そのせいか、「Journal of Participatory Medicine」のアドバイザリーボードにはアダム・ボスワース、エスター・ダイソン、デヴィッド・キッベなど、Health2.0コミュニティの主要メンバーが名を連ねている。

ところで「e-Patients.net」で以前公開された「e-Patients白書」では、次のような「患者駆動医療:七つの仮説」が掲げられている。これは「参加型医学」の基本原理ともいえるものだが、なかなかに興味深い。 続きを読む

闘病体験配信の多様化: GoogleBooks、Twitter、ビデオ

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TOBYOプロジェクトが目指しているものについて、これまで様々な観点からこのブログでは言及してきたのだが、あらためてシンプルに言ってしまえば

「ネット上のすべての闘病体験ドキュメントを分類整理して可視化し、すべての人が簡単に利用できるようにする」

ということになる。これをめざすべく、私たちはこれまでネット上約1万7千件の闘病サイトや闘病ブログを可視化し、そのうち約1万サイトを横断的に全文検索できるようにした。今後も、ネット上に約三万サイトはあると推定される闘病サイトを、最終的にはすべて可視化していくことになるが、最近、個人サイトやブログだけでない闘病体験の配信が出現してきている。闘病体験配信は多様化しつつあるのだ。TOBYOはこれらについても、いずれ整理分類し可視化し、すべて検索できるようにしていきたい。

まず、Googleブックスがリアル闘病本のネット配信をはじめていることに注目したい。たとえば「闘病記」で検索すると、まだ検索ヒット件数は108点にすぎないが、いくつか興味深いリアル闘病本をオンラインで読むことができる。これらのリアル闘病本は、今のところ文芸社など自費出版を専門に扱う出版社から自費出版されたものがほとんどだが、今後、一般の出版社のリアル闘病本もネット上に公開されてくると思われる。また、本文のうち部分的に割愛されて公開されているものも多いのだが、本文をキイワード検索できるなど、リアル闘病本にはないデジタル化の恩恵を活かしたメリットもあるわけだ。 続きを読む

日本の総患者数2,674万人と闘病サイト

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闘病サイトを開設し、闘病ドキュメントを公開している人は、すべての闘病者のうち、どの程度の割合になるのだろうか。ふとそんなことを最近考えることがある。これまで闘病ユニバースを構成するサイト数を、およそ三万件と想定してきたが、ではこの三万件という数字は、いったいどう見るべきものだろうか。「三万件も」とそのサイズの大きさを言うべきなのか、あるいは「三万件しか」とその小ささを指摘すべきなのか。

こんなことを考えてみたのは、当方は「闘病ユニバース」という括りで闘病サイト群を見てきたのだが、ではこの「闘病ユニバース」というものは、日本の闘病者全体の中でいかほどの位置を占めているのか、ここがどうしても気になるのだ。そこでまず「日本の全闘病者」だが、これは厚労省が定期的に発表している「患者調査」から概要を把握することができる。最新版は「2005年患者調査」である。この調査報告書の「第12表:主要な傷病の総患者数」を見ると、主要傷病の総患者数は約2,674万人と推定されている。ちなみに、ここにおける「患者」とは「医療機関で受療している人」のことを指している。そして疾患別の患者数ベストテンは次のようになっている。 続きを読む