闘病体験配信の多様化: GoogleBooks、Twitter、ビデオ

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TOBYOプロジェクトが目指しているものについて、これまで様々な観点からこのブログでは言及してきたのだが、あらためてシンプルに言ってしまえば

「ネット上のすべての闘病体験ドキュメントを分類整理して可視化し、すべての人が簡単に利用できるようにする」

ということになる。これをめざすべく、私たちはこれまでネット上約1万7千件の闘病サイトや闘病ブログを可視化し、そのうち約1万サイトを横断的に全文検索できるようにした。今後も、ネット上に約三万サイトはあると推定される闘病サイトを、最終的にはすべて可視化していくことになるが、最近、個人サイトやブログだけでない闘病体験の配信が出現してきている。闘病体験配信は多様化しつつあるのだ。TOBYOはこれらについても、いずれ整理分類し可視化し、すべて検索できるようにしていきたい。

まず、Googleブックスがリアル闘病本のネット配信をはじめていることに注目したい。たとえば「闘病記」で検索すると、まだ検索ヒット件数は108点にすぎないが、いくつか興味深いリアル闘病本をオンラインで読むことができる。これらのリアル闘病本は、今のところ文芸社など自費出版を専門に扱う出版社から自費出版されたものがほとんどだが、今後、一般の出版社のリアル闘病本もネット上に公開されてくると思われる。また、本文のうち部分的に割愛されて公開されているものも多いのだが、本文をキイワード検索できるなど、リアル闘病本にはないデジタル化の恩恵を活かしたメリットもあるわけだ。

いずれ書店や図書館にわざわざ足を運ぶことなく、誰もが自宅や病室から直接オンラインでリアル闘病本を探して読むことになるだろう。こうなると、従来の闘病サイト上のドキュメントとリアル闘病本の境目はなくなる。TOBYOでも、今後Googleブックスで配信されるリアル闘病本についても対応していきたい。

次に、Twitterで闘病体験をつぶやく闘病者が徐々に増加し始めてきていることに注目したい。リアルタイムに闘病体験を配信するコミュニケーションツールとして、Twitterは非常に優れている。病室や自室から、いつでもどこからでも携帯やスマートフォンで、今の気分、痛み、病状、服薬などをリアルタイムで配信できる。さまざまな闘病データの記録ツール、あるいは共有ツール、さらに遠隔医療ツールとしても、Twitterは非常に使いやすい。今後、Twitterで配信される闘病体験をアグリゲートすることもTOBYOプロジェクトの課題となる。

そして闘病体験ムービーの増加にも注目している。これはビデオカメラがどんどんコンパクトにしかも安価になってきて、誰でも手軽に簡単に、自分の体験をムービー記録することがフツウになってきていることが大きい。闘病体験をムービーで公開することは、もはや特別なことではない。

以前、リハビリのムービーを闘病ブログで公開している例をご紹介したが、このような個人サイトでの公開のみならず、最近は製薬会社などが自社製品ユーザーの闘病体験ムービーを公開する例も増えてきている。製薬会社のシェリング・プラウ社のC型肝炎サイトでは、自社インターフェロンを使用してC型肝炎を克服した闘病者の体験をムービーで配信している。このサイトは、C型肝炎患者の間でも話題になっているようだ。このように、自社製品を実際に体験した闘病者を通じて紹介することは、非常に説得力がある効果的な手法だ。闘病体験を媒介とする製薬会社のコミュニケーション活動というものが、今後は増えてくると思う。

一方、従来から製薬会社各社は、かなり予算を投入して疾患ごとの情報提供サイトを作ってきたのだが、消費者にはほとんどあまり知られていなかった。これはずいぶんもったいないことだ。たとえば疾患別サイトのアグリゲーションサービスというものを作り、一カ所で横断検索できるようにすれば非常に便利になるだろう。このようなことも今後のTOBYOの課題になると考えている。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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