闘病サイトを開設し、闘病ドキュメントを公開している人は、すべての闘病者のうち、どの程度の割合になるのだろうか。ふとそんなことを最近考えることがある。これまで闘病ユニバースを構成するサイト数を、およそ三万件と想定してきたが、ではこの三万件という数字は、いったいどう見るべきものだろうか。「三万件も」とそのサイズの大きさを言うべきなのか、あるいは「三万件しか」とその小ささを指摘すべきなのか。
こんなことを考えてみたのは、当方は「闘病ユニバース」という括りで闘病サイト群を見てきたのだが、ではこの「闘病ユニバース」というものは、日本の闘病者全体の中でいかほどの位置を占めているのか、ここがどうしても気になるのだ。そこでまず「日本の全闘病者」だが、これは厚労省が定期的に発表している「患者調査」から概要を把握することができる。最新版は「2005年患者調査」である。この調査報告書の「第12表:主要な傷病の総患者数」を見ると、主要傷病の総患者数は約2,674万人と推定されている。ちなみに、ここにおける「患者」とは「医療機関で受療している人」のことを指している。そして疾患別の患者数ベストテンは次のようになっている。
- 高血圧性疾患 (781万人)
- 歯及び歯の支持組織の疾患 (566万人)
- 糖尿病 (247万人)
- 悪性新生物(がん) (142万人)
- 脳血管疾患 (137万人)
- 白内障 (129万人)
- 喘息 (109万人)
- 虚血性心疾患 (86万人)
- 胃潰瘍及び十二指腸潰瘍 (63万人)
- 前立腺肥大 (46万人)
(「平成17年患者調査の概況」(厚労省))
まず総患者数2,674万人に対し、闘病サイト数三万というのはどう見ても少ないと言わねばならないだろう。これは、構成比では0.1%未満に過ぎない。次に、仮に総患者数を基に「国民の5人に1人が患者である」としてみると、これに昨年報道された「日本の総ブログ人口1200万人」を単純にあてはめ、想定闘病サイト数を計算すれば240万件となる。つまり総患者数から見てだけではなく、総ブログ人口から見ても、闘病サイトの三万件という現状サイズはいかにも小さいのである。
ここから二つのことが言えるだろう。一つは、闘病サイトというものがありふれたものではなく、むしろ非常に貴重な存在であること。二つ目に、まだサイズが小さいがゆえに、これからまだ増加する余地が大きいことである。闘病サイトが貴重な存在であるなら、その貴重な価値を活かし、報いるような仕組みを作っていかなければならないと思う。そして今後、闘病サイトが増加する余地が大きいとすれば、それを奨励し、支援していく仕組みもあった方がよいだろう。
TOBYOは、闘病ユニバースのインフラツールでありハブであることを目指してきたが、生態系として闘病ユニバースを見た場合、その持続的な繁栄発展に何らかの形で寄与していきたいと考えている。現在、そのための資金還流スキームの設計に取り組んでいる。
三宅 啓 INITIATIVE INC.