三宅 啓 の紹介

株式会社イニシアティブ 代表 ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にすることをめざしています。

ネット医療情報利用実態と今後の展望

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以前、ブログなどで闘病体験を公開している日本の闘病者はおよそ三万人であり、全患者に占める割合は非常に小さいと書いた。このことについて、その後あれこれ考えていたのだが、去る6月「Pew Internet & American Life Project」が発表した米国におけるインターネット医療情報利用実態調査報告書を見ると、やはり同じような傾向が米国にもあることがわかった。Health2.0ムーブメントの隆盛がある一方では、このような厳しい現実も存在することを直視したい。

まず同報告書は「米国成人のうち61%が医療情報を求めてインターネットにアクセスしており、これは2000年(25%)から著しく増大」としている。しかし「インターネットの世界に一層深く関与しつつも、引き続き米国成人は医療情報のトラディショナルソース(医師、家族、書籍等)も参照している」とも指摘している。そして注目すべきは同報告書が「インターネットによる医療情報利用者のうちの約半数は、自分のためにではなく、誰か他人の代理で情報を検索している」と指摘しているところだ。これでいくと、実際に自分のためにネット上の医療情報を利用しているのは成人の約30%になる。 続きを読む

次世代ウェブ医療サービス登場!: keas

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6日付NewYorkTimesは、アダム・ボズワース氏率いる「keas」のローンチを紹介している。アダム・ボズワース氏がGoogleHealthプロジェクトから離脱すると同時にGoogleを去り、すでに2年が経過した。これまでのボズワース氏の業績から見て、かならず画期的な医療サービスを開発してくれるとの期待は大きかったが、登場した「keas」はこれら期待に応え、まさに次世代ウェブ医療サービスのあり方を具現化するものである。

これまでのウェブ医療サービスは、さまざまに雑多なスタイルはあれど、おおむね「医療情報サービス」というくくり方で一括できるものであった。つまり「医療情報」をどのようにユーザーに提供するかをめぐり、提供方法のバリエーションと便益性を競うものであった。そしてここにおける「医療情報」とは、あくまでも「一般的な医療情報」のことであった。疾患情報、薬剤情報、治療情報、医療機関情報など多岐に渡るとはいえ、これらはあくまで一般化され抽象化された情報である。ここで欠落しているのは個別性であり具体性であり、さらに言えば特定個人についての情報である。だが闘病者が求めているのは、たとえば「乳がん」という一般医療情報ではなく、本当は「自分の乳がん」に関する個別情報なのだ。 続きを読む

新しいファンドレイジング手法: ドネーション・ミュージック


去る7月1日から、ACジャパン(旧公共広告機構)の「国境なき医師団」支援キャンペーンCMがTV放映されている。このテーマソング「BEYOND THE BORDER」が9月30日からドネーション・ミュージックとしてネット配信されている。ドネーション・ミュージックとは楽曲をダウンロード購入した際、コストを差し引いた収益金を寄付する仕組みだ。収益金は「国境なき医師団」に全額寄付される。今回のキャンペーンでは複数のミュージシャンやアーティストの参加が予定されており、今後ドネーション対象作品は増えるようだ。このキャンペーンを企画運営しているのは電通ソーシャルデザインエンジン。

クリック募金をはじめ、非営利団体のファンドレイジング(資金開拓)手法がさまざまに開発されてきているが、今回のドネーション・ミュージックもその一環と考えてよいだろう。当方のTOBYOプロジェクトも目下、資金還流スキーム作りに取り組んでいるのだが、これらファンドレイジング手法を採用することになるし、今回のドネーション・ミュージックのような方向性は、スキームを考える際大いに参考になる。 続きを読む

バザールとしての次世代医療システム:

まずは訂正から。先日エントリで、厚労省の資料から「日本の総患者数2,674万人」としたが、あとでよくよく考えてみれば、この資料はうつ病など精神疾患が抜けており、実際の総患者数はもっと多いはずだ。だがいずれにしても、闘病ユニバースの推定サイト3万件というのは全患者数から見て少ないことに変わりない。

昨日、TOBYO収録サイト数は1万7千件に達した。以前よりは収録ペースを落としているが、今後も収録数を増やし、いずれ闘病ユニバースの全体像をユーザーに提示できればと考えている。これまで過去に何回か「量的拡大の限界」ということを立ち止まって考え、「量から質への移行」など模索してきたこともあった。だが「推定3万件」という闘病ユニバースのサイズを考えてみると、十分に手の届くサイズであり、このまま全体像に近い規模まで収集を続けていきたい。 続きを読む

Microsoftの個人健康管理ツール”My Health Info”登場

 MyHealthInfo

今月1日から、Microsoft社は「MSN Health & Fitness」  に新しい個人健康管理サービス「My Health Info」ベータ版を公開した。このサービスは個人医療情報管理のためのツール群をウィジェットとして提供するもので、ユーザーは自分のページに好きなウィジェットを自由に配置して使用できる。現在、次のようなウィジェットが提供されている。

  • 健康データ管理:
    BMIトラッカー、血圧トラッカー、血糖値トラッカー、検査ラボデータ、心拍数トラッカー、歩数トラッカー
  • 個人医療情報管理:
    病歴、薬歴、予防接種、アレルギー
  • 健康ニュース:
    医学論文、高血圧ニュース、糖尿病ニュース
  • その他:
    高血圧FAQ、糖尿病レシピ、HealthVaultアプリ

この個人健康管理サービス「My Health Info」の特徴は、ツールをウィジェット化しユーザーの必要に応じてカスタマイズできる点と、MicrosoftのPHRプラットフォームであるHealth Vaultと連携している点である。これでHealth Vaultにある自分の医療情報を、ユーザーは自由に活用できるようになるわけだ。 続きを読む