バザールとしての次世代医療システム:

まずは訂正から。先日エントリで、厚労省の資料から「日本の総患者数2,674万人」としたが、あとでよくよく考えてみれば、この資料はうつ病など精神疾患が抜けており、実際の総患者数はもっと多いはずだ。だがいずれにしても、闘病ユニバースの推定サイト3万件というのは全患者数から見て少ないことに変わりない。

昨日、TOBYO収録サイト数は1万7千件に達した。以前よりは収録ペースを落としているが、今後も収録数を増やし、いずれ闘病ユニバースの全体像をユーザーに提示できればと考えている。これまで過去に何回か「量的拡大の限界」ということを立ち止まって考え、「量から質への移行」など模索してきたこともあった。だが「推定3万件」という闘病ユニバースのサイズを考えてみると、十分に手の届くサイズであり、このまま全体像に近い規模まで収集を続けていきたい。

1万7千件の闘病サイト情報を収集し整理分類する中で、これらのルースでオープンなネットワークが意味するものが徐々にわかってきた。それらはHealth2.0や参加型医療など新しいムーブメントの出現とシンクロしており、「次世代医療」というものの姿をぼんやりとだが指し示しているのだと思う。この「闘病ユニバース」という闘病者が自発的に生み出したネットワークに即して言えば、「次世代医療」の一つの特徴は「End-to-End」にあると言えるだろう。

すべての闘病活動が、まずプロバイダー(医療機関・医療者)とのコンタクトから始められることが必須であった従来医療システムとは違い、次世代の医療システムは、それらのチャンネルとは別に、闘病者側の「End-to-End」チャンネルが同時に平行して活用されると思われる。現在の闘病ユニバースは、この新しいチャンネルの母体となるだろう。たとえて言うと「闘病知識、情報のバザール」が開かれ、そこで闘病に役立つ生活ティップスや体験の相互交換が積極的に行われることになるのだ。従来これらはクチコミや患者会などで限定的に行われてきたが、今後は誰もが参加できるネット上のオープンなバザールへと発展進化するだろう。ちなみに従来の医療システムはこのようなバザールではなく、これとは対立する「伽藍としてのシステム」であった。

当面、医療界側の「伽藍システム」が直ちに崩壊する気配はないが、これもやがて徐々にバザール化していくことになるだろう。参加型医学(医療)などで提唱されているが、今後、医療システムの中で闘病者が果たす役割は大きくなっていく。それとともに医療者の役割も変わっていくだろう。医療者もバザール参加者の一員になっていくのだ。

伽藍の高みから垂直に降ってくる「説教」や「宣告」に唯々諾々と従うのではなく、開かれたバザールで主体的に自分に必要な知識や情報や協力者を探し出し手に入れるような、そんなアクティブな「バザール参加者」としての患者像・闘病者の出現を、闘病ユニバースは予告しているのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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