B2Bモデルへのチャレンジ

B2B_BlackSwan

昨日エントリで医療ウェブサービスをターゲットから考えてみた。やや悲観的な論調になってしまったのは、単に当方の痛風発作のせいと考えていただきたい。実のところ楽観も悲観もなく、ただ現実の諸相をできれば直視したいとの思いしかない。それに楽観とか悲観とか言ってみても、あるクリティカルポイントで画然と区分されているわけでもない。そこには楽観から悲観に至るある種の連続体があるだけである。

TOBYOがターゲット問題の困難からフリーハンドを持つと考えているのは、TOBYOがB2Cだけに依存する事業ではなくなっているからだ。TOBYOは闘病ユニバースの全ての闘病体験を可視化するプロジェクトであり、その意味では闘病ユニバースのインフラツールを目指している。だがそれと同時に、新たにDFCプロジェクトへと進み始めたTOBYOはB2Bの領域へと歩を踏み出そうとしている。 続きを読む

ウェブ医療サービスのターゲット試論

 target

昨日、今日と痛風発作のため自宅静養。薬を飲んで早く痛みが去るのを待つのみ。このところ酒量増加気味でそれが直接原因。既に生涯飲酒量を越えた可能性大なので、そろそろアルコールをやめようかとも思ったりするが、実行可能かどうか怪しい。

久しぶりに自宅で音楽三昧の時間を楽しんだが、Pewレポートが発表されて以来、医療ウェブサービスの今後を考えることが多い。TOBYO公開からの2年間を思い返してみると、今のところ日本の医療ウェブサービスで現実にワークするものというのは、残念ながら非常に限られているような気がする。それを「なぜこうなっているのか」と原因解明しても詮無いはなしであるから、とにかく今現実にワークするものだけを見極めて動かすしかないのかもしれない。

TOBYOの経験を振り返ってみても、当初構想からかなり変更を余儀なくされているわけで、特にクラウドソーシングがあまりワークしなかったのは予想外の事態だった。「みんなで闘病体験を整理する」ということだが、TOBYOのインターフェースの問題もあるだろうが、それよりもそのようなことが実際に動き出す「気配」というものがまるでなかったのだ。逆に、たとえば他人のサイトをブックマークすることの抵抗感がかなりあることがわかり、これでは「ユーザー参加型医療サービス」への道は遠いと感じた。また、同時に「無断リンク禁止」など大昔の迷信がまだ根強く信奉されていることもわかり、率直に言って失望感を禁じ得なかった。今更「無断リンク」でもあるまい。しかしそれが「現実」なのだ。 続きを読む

DFC開発メモ

 tool

もともとTOBYOプロジェクトはシンプルなサービスを目指してきたと思う。いや、最初から積極的に目指してきたというよりは、むしろ結果としてそうなったと言った方が正しいのだろう。そして、このシンプルさに今後もこだわりたいと考えている。特定分野にシンプルに特化し、シンプルな機能を実現するツールであり続けたいと考えている。

中途半端な拡張より、愚直なシンプルさの方が強いに決まっている。あれもこれもと戦線を拡張するたびに、要所の手当ては薄くなり、全体としての脆弱性は増すだろう。たとえばコンテンツだが、TOBYOプロジェクトはコンテンツを作らない。コンテンツはユーザーが自分の好きなところで作ればよい。

そのように考えてくると、現在着手しているDFC(Direct From Consumer)商品化もコンテンツを制作するのではなく、ユーザーにデータへのアクセスを提供するツールであるべきだ。つまりDFCはインターフェースとフィルタリングが肝であり、データの分析や解釈はユーザーに任せるべきなのだ。ここが重要だ。そして、やはりシンプルなツールに徹するべきだろう。 続きを読む

書評:「歴史は『べき乗則』で動く」

 UBIQUITY

たまたま書店で何の予備知識もなく手にとった「歴史は『べき乗則』で動く—種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学–」(マーク・ブキャナン、ハヤカワ文庫) だが、これが読み始めると止まらない面白さだ。途中、マンデルブローのフラクタル幾何学が出てくるあたりで、「ひょっとして、これは『二匹目のドジョウ』ならぬ『二匹目の黒鳥』ねらいか?」とも思った。昨年話題になったナシーム・ニコラス・タレブ「ブラック・スワン—不確実性とリスクの本質」(ダイヤモンド社)と基本的なテーマは同じと考えてよいだろう。

だが、実は本書は2003年にハヤカワから出た単行本「歴史の方程式—科学は大事件を予知できるか?」を改題し新たに文庫化したものらしく、「ブラック・スワン」よりも先に上梓されている。調べてみると「ブラック・スワン」下巻に本書についての言及があるとのことだ。そうすると「一匹目の黒鳥」はこっちの方だったのか?そんなことはどうでもよく、目次を一瞥しただけで本書の面白さは十分にわかるだろう。

第1章 なぜ世界は予期できぬ大激変に見舞われるのか
第2章 地震には「前兆」も「周期」もない
第3章 地震の規模と頻度の驚くべき関係--べき乗則の発見
第4章 べき乗則は自然界にあまねく宿る
第5章 最初の地滑りが運命の分かれ道--地震と臨界状態
第6章 世界は見た目よりも単純で、細部は重要ではない
第7章 防火対策を講じるほど山火事は大きくなる
第8章 大量絶滅は特別な出来事ではない
第9章 臨界状態へと自己組織化する生物ネットワーク
第10章 なぜ金融市場は暴落するのか--人間社会もべき乗則に従う
第11章 では、個人の自由意志はどうなるのか
第12章 科学は地続きに「進歩」するのではない
第13章 「学説ネットワークの雪崩」としての科学革命
第14章 「クレオパトラの鼻」が歴史を変えるのか
第15章 歴史物理学の可能性 続きを読む