EHR認証団体に対する利益相反疑惑

このブログでは「医療IT化をめぐる新旧両陣営の戦い」 などのエントリで触れてきたが、総額200億ドルとも300億ドルともいわれるオバマ政権の医療IT促進政策をめぐり、新旧IT企業陣営の戦いは熾烈さを増してきている。

この戦いはまず、米国においてEHR認証をほぼ独占的におこなってきた民間非営利認証団体CCHIT(Certification Commission for Healthcare Information Technology) に対する批判として始まった。このCCHITという民間団体は、2004年に医療IT分野の業界団体であるHIMSS(Healthcare Information and Management Systems Society)との非常に強い結びつきと強力な支援のもとに創設されており、HIMSSの理事がCCHITの理事を兼務し、また主要メンバーが大手医療IT企業であるなど、「業界団体の別動隊」のような性格を持つにもかかわらず、創設以来、米国政府の医療IT政策とくにEHRシステム基準策定と認証に関し独占的な役割を果たしてきたのである。 続きを読む

e-ペイシャント革命


一昨日、「ソーシャルメディア革命」を取り上げたが、今度は「e-ペイシャント革命」である。まぁ、いろんな「革命」が勃発するものだ。この「e-ペイシャント革命」は、どうやらコンファレンスのプロモーションビデオのようだ。「e-Patient Connections 2009」 と題されたこのコンファレンスは、10月26-27日にフィラデルフィアで開催される。

参加費は1,795ドル(!)で参加特典として「8GB iPod Touch」が付くらしい。オマケとしては面白いが、それ以上のものでもない。とにかくこのコンファレンスサイトを見ていると、何かコンファレンス屋の商魂だけが剥き出しで露出しているような感がある。だが、人の商売にケチをつけるつもりもない。

しかし、一方では強い既視感におそわれる。先日エントリでも触れたが、かつて「e-ヘルス革命」とやらが喧伝されていた時分、同時に「e-ヘルスコンシューマーの台頭」ということが言われていた。この「e-ヘルスコンシューマー」とやらが「革命」の主要な担い手であるとかないとか、何かそのような議論があったと記憶する。だが当時からそれらの言説に対し、正直なところ首を傾げざるを得なかった。その牽強付会ぶりに対し、強い違和感があった。今になって明言できるが、「e-ヘルスコンシューマー」などどこにも存在していなかったのだ。 続きを読む

TOBYOプロジェクトの強化改善と修正点

TOBYO0908

今週からいきなり秋めいてきたが、TOBYOプロジェクトはいくつかの修正をしながら、今年後半へ向けて動き始めている。TOBYO自体の機能改善は引き続き進めているが、他方、ビジネススキームもさまざまな方々と相談をしている。

まずTOBYOの機能改善では、検索エンジンの精度向上と機能強化に取り組んでいる。従来、クローラーのパーフォーマンスが問題となっていたが、これにかわる新たなクローラー開発を進めているところだ。本文抽出や重複データチェックなどで大幅な精度の向上を目指している。とにかくバーティカル検索エンジンはTOBYOプロジェクトの要となるユニットであり、この改善強化のプライオリティは高い。文字通りの「世界初の闘病体験全文検索エンジン」として、さらに「闘病情報の社会インフラ」として、さまざまな方々に使っていただけるよう、今後もここに注力していきたい。 続きを読む

ソーシャルメディア革命


今日のソーシャルメディアの隆盛ぶりがダイレクトに伝わってくるビデオだ。サウンドトラックも、映像のつくりも良い。良くできたビデオだ。だが、それでもなんとなく食傷感が強い。それはなぜなのかと考えてみた。

“Social Media isn’t a fad”ということはわかったが、では本当に”it’s a fundamental shift in how we communicate.”ということになるのだろうかと、へそ曲がりなツッコミの一つも入れたくなる。これについてたとえばJohn Battelle氏は、「ソーシャルメディアは、われわれがコミュニケーションする方法のシフトを意味するのではない。それは、われわれのコミュニケーション能力における階段関数なのだ」と評している。なるほど。 続きを読む

医療評価: JCAHOに競争をいどむDNV

DNV

これまで「医療評価」と言えば、それはJCAHO(現JC)  のことを指していた。数年前、私たちは患者視点の医療評価システムを構築しようとしていたが、とにかくまずはともあれ、最初に研究しなければならなかったのはJCAHOの歴史とシステムであった。とにかく「医療評価」の世界でJCAHOを知らなければ話にならない。そのようにJCAHOは間違いなく医療評価のデファクトスタンダードの位置にあり、我が国の日本医療機能評価機構  もJCAHOをモデルとして設立されている。

ところが今年に入って米国の医療ブログ界を見ていると、「ウチの病院はJCAHOの継続加入を打ち切った」などというエントリをあちこちで目にするようになった。「何が起きているのだろうか?」といぶかっていたのだが、ようやく徐々に事情が判明してきた。なんとJCAHOに手ごわい競争相手が現れたのである。そのコンペティターとは、ノルウェイからJCAHOの牙城に乗り込んできたDNV(Det Norske Veritas)である。DNVはノルウェイで1864年に創設され、当初はノルウェイ商船の安全性や技術水準などの海運評価サービスに従事していたが、その後リスクマネジメント分野へ、さらに医療評価分野へと事業領域を拡大していったのである。 続きを読む