書評:「ウェブはバカと暇人のもの」(中川淳一郎著、光文社新書)

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春から「話題の書」であることは知っていたが、ようやく遅まきながら通読した。本書を読みながら、かつて自分が経験したことがフラッシュバックを伴って思い出された。あれはたしかドットコムバブル崩壊直後の2001-2002年頃だったと思うが、当時、私は広告会社を辞し、ウェブ制作会社で大手通信キャリア企業が運営していた誰もが知っている某ISPポータルのコンテンツ企画・運営に携わっていた。本書にあるエピソードや著者の主張は、当時の私が経験したことや考えていたこととほとんど同一のものだ。だから正直言って、ある意味で「自嘲的な懐かしさ」といった感覚に領されたのは間違いない。

本書でも繰り返し述べられている「B級で、おバカな、エンタメ企画」が、当時、まさにコンテンツ企画の王道であり、またクライアント筋から要求されていたことだ。だがこれら「B級で、おバカな」コンテンツ企画とサイト運営に携わる現場は、やり場のない閉塞感に強くとらわれていたのである。第一、作っていても「面白くない」のである。そして、たまたまある若手タレントを起用した「B級、おバカ」コンテンツが、タレント自身の粗相によって炎上した「事件」を経て、とうとう「こんな世界とは絶縁したい」と決め、その現場から去ったのである。 続きを読む