ある違和感

3月9日の日経朝刊社説「レセプト完全電子化を後退させるな」に対し、賛否両論がネット上のあちこちに散見される。とりわけ「医師ブログ」などからは強い拒否反応が上がっているが、相変わらず匿名で、なぜ逆上までしなければならないか理解に苦しむ。むしろ日経社説は、医療IT化をめぐる常識的な見解を述べているに過ぎないと思える。

このブログでも、過去のいくつかのエントリでレセプトオンライン化など日本の医療IT化の遅滞ぶりを取り上げてきたが、実は米国などでもIT化は遅々として進んでおらず、内外を問わず、なぜこんなに医療者とITは相性が悪いのか。
かつて数年前、厚労省と経産省が共同主催するある公開シンポジウムが開かれた。そのシンポジウムのタイトルは、たしか「医療にITは必要か?」というものであった。とにかくこのタイトル自体に驚いてしまった。いざシンポジウムが始まってみると、その疑念はますます深まるばかりであった。出席パネリストは医師、学者を中心にIT企業、NPO、作家などであったが、なんとこれらの出席者を医療IT化に対する「賛成派」と「反対派」に分け、それぞれの言い分を展開させようというのだから、唖然とするほかなかった。 続きを読む

クラウドソーシングで医療改革

HealthReform

昨年12月、オバマ次期大統領(当時)の政権移行作業チームは、全米市民に米国医療制度改革について、それぞれの地域で「医療地域ディスカッション」を開催し討議に参加するよう呼びかけた。ホリデーシーズンにもかかわらず、この呼びかけに応え、9千人を上回る市民が「ディスカッション」に参加登録し、医療制度改革の討議という共通目的のもとに、家庭、事務所、コーヒーショップ、消防署、大学、地域センターなどに集まった。

全米各地のディスカッション風景

グループ討議のもようはそれぞれの会場ごとにグループレポートにまとめられ、また参加者にはアンケート調査が実施され、それらすべては大統領政権移行チームのウェブサイト「www.change.gov」に集約された。集まった医療改革討議グループレポートは3,276件、アンケート調査票は30,603票に達した。 続きを読む

Google Healthの付加サービス登場

epocrates

先週、情報共有サービスを発表したGoogle Healthだが、サードパーティが提供する付加サービスも登場してきた。

医師向け薬剤情報サービスのEpocratesだが、Google Healthユーザーがかかりつけ医師に、自分の医療情報を見る許可を与えるサービスを開始している。Epocratesを利用している医師の会員IDを教えてもらい、Google Healthユーザーが「かかりつけ医師」として登録する仕組みになっている。だが、これでは先週発表された情報共有サービスとダブりそうだが・・・・・。さてどうするのだろうか? 続きを読む

Google Healthの新機能

Ghealth

3月4日、GoogleはオフィシャルブログでGoogle Healthの新機能を発表した。今回追加された新機能は情報共有機能とグラフ機能である。

まず情報共有機能だが、Google Healthに蓄積されたユーザーの個人医療情報を家族、友人、医師などと共有することができる。これによってユーザーの病歴、薬歴やアレルギーの有無など個人医療情報が近しい人々と共有され、突発時に適切な救急医療を受けることができる。情報共有するためには、Google Healthにログインの上、「このプロフィールを共有する」ボタンをクリックして共有したい人のメールアドレスを入力する。すると招待メールが共有相手に送られ、相手はメールに記載されたリンクを利用してユーザーの個人医療情報を見ることができる。このリンクは記載メールからのみ利用でき、転送メールなどからは利用できない。また、ユーザーは自分の個人医療情報へのアクセス状況記録を確認することができ、いつでも共有を停止することもできる。 続きを読む

医療wikiの現在

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以前から「医療wikiの決定版」と言われていたMedpedia。ついに先月ベータリリースされた。すでにTechCrunch「Medpediaは医師、患者ともに利用できる健康情報版のWikipedia」で取り上げられているので、詳しい情報はそっちをご参照あれ。当方も以前からこのサイトに注目してきたが、結局、医療者と一般ユーザー双方をターゲットにしている点、そしてSNS機能を付加している点がこれまでの医療wikiサイトとの際立った違いである。世界トップレベルの医療関係者が結集し「健康・医療分野の情報プラットフォームの決定版になる可能性が十分にあるだろう」とTechCrunchでも評されているが、残念ながら英語版のみである。日本でもこのような「健康医療情報の決定版プラットフォーム」を作ることはできないものか。「Medpedia Japan」。実現できれば素晴らしい。 続きを読む